「猫がよく水を飲むようになりました…」
「動物病院で腎不全って言われました…」
「猫の腎臓病って余命どれくらいなの?」
など、猫が腎不全(腎臓病)になったら不安で心配ですし、「何かいい治療はないかな…」って思ってしまいますよね。
この記事では、
- 猫の腎不全ってどんな症状が出るの?
- 猫の腎不全の予防はできないの?
- 猫の腎不全のおすすめフードやサプリは?
などを獣医療に携わって20年の獣医師トラまりもが分かりやすく解決します!
※腎不全には「急性腎不全」と「慢性腎不全」がありますが、今回は中高齢の猫がよくなる「慢性腎不全」についての記事です。
目次
猫は腎不全になりやすい!?
猫の祖先は「リビアヤマネコ」と言われています。
リビアヤマネコは、リビア以北のアフリカや中近東に住んでいる、現存の野生の猫です。
紀元前3000年くらいのエジプトでは小麦や大麦の生産が盛んで、それら作物をネズミから守るために、リビアヤマネコが家畜化されたと言われています。
家畜化されたリビアヤマネコが、今日の猫になったと言われています。
祖先がアフリカなど砂漠地帯に住んでいるということは、猫も水不足に対応できる体を持っているということになります。
しかし、水をあまり飲まない体質が、残念ながら「腎臓を悪くする」ということにつながってしまっているのです。
猫の腎不全の症状は「よく水を飲む」「尿の回数が増えた」
猫の腎不全の症状は、「よく水を飲む」「おしっこの回数が増えた」がダントツで多いです。
おしっこが透明(薄く)なったということで気づかれることもあります。
他にも、
- 食欲がない
- 痩せてきた
- 元気ない
- よく吐く
- 毛がボサボサ
- 便秘、下痢
などで気づかれることもあります。
猫の腎不全は血液検査、尿検査で診断する
猫の腎不全は、血液検査や尿検査で診断できます。
血液検査で腎数値(BUN、Cre)が高けば、腎不全と診断できます。
また、超音波検査やレントゲン検査で腎臓の形や結石の有無、他の部位の異常がないかを確認します。
腎不全になってしまうと基本的には治らないので、その前段階(慢性腎臓病の初期)で治療を始める必要があります。
【腎不全と慢性腎臓病(CKD)】
腎不全とは、腎臓の機能が落ちた(働きが悪くなった)状態です。
具体的には、腎臓の機能が30%以下になった時を腎不全と言います。
一方、慢性腎臓病は「症状のない軽度の腎臓病」も含めている言葉で、腎不全の予備軍であると言えます。
この予備軍の状態のときから、治療を始めることが重要です。
血液検査で腎数値が上がる前に、より早期に腎臓の異常を感知できる方法があります。
SDMAで猫の腎不全を早期発見!
SDMA(対称性ジメチルアルギニン)は、腎機能が40%(早いときでは25%)喪失した時点で感知できる血液検査項目です。
他の腎臓マーカーより早く感知できるので、腎臓病の早期発見ができます。
そのため様々な対策が取れるので、腎臓病の進行を遅らせることができます。
猫では従来より17か月も早く腎臓病を発見できると言われています。
猫が腎不全になったら、ステージごとに治療が変わる
猫の腎不全は、急性か慢性か、また各々のステージによって治療法が異なります。
猫の慢性腎不全の症状の一つの「多飲多尿」は、
腎臓の機能が落ちてしまった結果、尿を濃く作ることができず、薄い尿としてダダもれになるため(多尿)、飲んでも飲んでも足りずにたくさん飲んでいる状態(多飲)です。
要は、脱水しているという事なのです。
なので、猫の慢性腎不全は点滴(補液)をするとよくなることが多いです。
猫の腎不全は、人や犬の腎不全とはちょっと違います。
人や犬の腎不全は「老廃物をろ過する能力」が落ちるので、老廃物が体に貯まりやすくなってしまいます。なので、定期的に検査をしていないと、気づいた時には病気が進行しているということがあります。
一方、猫の腎不全は上記の通り「ダダもれ」が原因なので、脱水を補ってあげるとよくなることが多いです。
猫の慢性腎不全は、急性期には動物病院で点滴治療を行い、ある程度数値が下がったら自宅で皮下補液をすることが多いです。
猫の腎不全の治療は、
- 飲み薬、サプリ
- 皮下補液
- 腎臓に配慮したフード
で行います。
治療①飲み薬、サプリ
腎不全で使う薬は、そのステージによって変わります。
- 降圧剤
- 利尿剤
- カリウムやリンを下げる薬
- 活性炭(血中の老廃物を腸で吸着して、便で出させる)
- ステロイドなど免疫抑制剤(腎臓の炎症を抑えるため)
- 腎性貧血の注射
- 活性型ビタミンD
- ラプロス(腎臓病がある程度悪いステージでも使える薬。腎臓の炎症で生じるサイトカインという物質の作用を抑制し炎症を抑える、血管拡張+血栓抑制で糸球体を守る)
- べナゼプリル(腎臓の糸球体の血圧を下げ、腎臓の負荷を軽減する)
- セミントラ
- 食欲増進剤
- 制吐剤
- 腸内細菌を整える(腸腎連関)
治療②皮下補液
猫の腎不全はもうこれに尽きる!といっても過言ではないです。
上でも説明した通り、猫の腎不全は脱水してしまっている状態です。
脱水すると、腎臓に行く血液量が減るので、より腎臓にダメージを与えることになります。
自宅にて皮下補液をしてあげることで、体がとっても楽になります。
また、お水を飲むことで、脱水対策にもなります。
愛猫に水を飲んでもらう方法は、こちらの記事を参考にしてください。▼
治療③腎臓に配慮したフード
人の腎不全同様、猫の腎不全も食事療法がとっても大事です!
残った腎臓の機能に負担をかけないために、療法食はいかにして、
- タンパク質
- カリウム
- リン
- ナトリウム
を減らしながら、適切なカロリー維持し、健康的な生活を送るようにできるかが重要になってきます。
腎臓病は「リンの制限」が重要とよく言われますが、なぜリンが高いと問題なのか?は、先日以下のツイートをしました。▼
✅犬猫の腎臓病でリンが高いことによる問題
・カルシウムとくっつき血管や腎臓で石灰化
・低Caで骨がもろく
・腎機能が落ちてることを示してる
・体が酸性に傾く
・食欲不振や嘔吐の原因
リン制限すると3倍も長生きするとの報告も。
最近はたくさんのリン吸着剤がある
あうものを選んであげて下さい😊— トラまりも@まりも動物病院 (@toramarimo_blog) March 21, 2021
各社研究の末、市場にはたくさんの種類の療法食が出回っています。
ペットフード会社大手のロイヤルカナンからは、たくさんの種類の腎臓療法食が出ています。
ロイヤルカナンの腎臓サポートセレクションは、
- リンの含有量を減少(ロイヤルカナンの他猫用フードと比較して約66%減)
- 高消化性のたんぱく質
- ω3系不飽和脂肪酸(EPA、DHA)や抗酸化物質配合
などの特徴があり、猫の腎臓への負担を軽減します。
ヒルズプリスクリプションダイエットは、ペットフード大手の会社ならではの、流通量と実績があります。
k/dもω3系不飽和脂肪酸を配合し、リンの調整と低ナトリウムを実現した食事です。
また、おいしさを追求した独自のEAT(TM)テクノロジーを採用し、適切な良質たんぱくを配合しています。
猫の腎不全は透析しないの?
人だと「腎不全=透析」というイメージがありますね。
【透析】
血液中の老廃物や余分な水分を外に出す方法です。
残っている腎機能が10%以下になると、血液のろ過が十分に行えず、老廃物や余分な水分を外に排出できなくなります。
そのときに行うのが透析で、これは一生行うようになります。
慢性腎不全の末期は、この透析か腎移植しか治療法はないです。
透析には、血液透析と腹膜透析があります。
【血液透析】
血液透析器を使って、血液を体内から取り出して、血液中の余分な水分や老廃物を取り出して、きれいになった血液を体に戻す方法です。
短期の場合は、専用の管を血管に配置して行いますが、一般的には長期で行うことが多いので、血液透析用の太い血管が必要です。
そのためあらかじめ血管を太くするため(1か月ほどかかる)、腕の静脈と動脈をつなぎ合わせる(シャント血管)手術が必要です。
【腹膜透析】
おなかの中に透析液を入れて、体内で血液をきれいにする方法です。
透析液を出し入れするチューブを、あらかじめ手術でおなかに設置する必要があります。
そのため体力があるうちに導入することが望まれます。
犬や猫では、
- 透析の機械が限られた施設にしかないこと
- 毎日の通院が不能であること
が多いので、血液透析はあまり一般的ではありません。
腹膜透析は、どの動物病院でも行うことができます。
猫の腎臓に配慮したおすすめサプリメントは?
サプリメントもまた、市場にはたくさんの種類があります。
何をあげればより効果があるのか、悩まれている方も多いとは思います。
- 毒素吸着(ヤシ殻活性炭、キトサン、アルギン酸ナトリウム、炭酸カルシウム)
- 抗貧血・抗高血圧(葉酸、ビタミンB6)
- 殺菌抗菌(ウラジロガシ)
が入った、無添加の国産のサプリメントです。
カツオ味なので、おやつ感覚で粒のまま食べさせることができます。
猫の腎不全って最期はどうなるの?
ごはんを食べられなくなってしまったり、何度も吐いてしまったり、痙攣が出てしまったり…
症状はみんな様々異なりますが、老廃物が体からうまく出せないので、苦しくなってしまう事が多いです。
- 家で看取ってあげるのか
- 病院で積極的な治療をするのか
など、家族みんなで、また主治医の先生と相談して決めましょう。
猫が腎不全にならないためには
日頃から、体調に変化がないか、おしっこや飲水量はどうなのか?などをよく観察をしてあげましょう。
おしっこ検査で腎臓病の進行度合いも分かります。
自宅での尿の取り方もご参照ください。
この記事で解説した通り、猫の腎不全に気づくタイミングはたくさんあります。
また、定期的な血液検査や尿検査を行い、早期発見・早期治療をしましょう!