猫の血尿は、冬場によく生じることがあります。
薄いピンク色の尿が出たり、血餅(どろっとした血の塊)が出ることも多いです。
また、症状もなく、見た目には血尿ではなくても、『尿検査をすると血尿(無症状)』ということもあります。
猫の血尿は、たくさんの原因があり、尿検査やエコー検査を含めて、さまざまな検査をすることで特定していきます。
この記事では、猫の血尿の原因や治療法、予防法、動物病院に行くタイミングなどをお伝えしています。
「愛猫が血尿をしているけど、原因は何だろう…」
「自宅でも、血尿を治せる方法はないかな?」
など、愛猫の血尿に関してお悩みがある飼い主様は、ぜひ読んでみてくださいね。
目次
猫の血尿の原因はたくさんある!ストレス、結石、膀胱炎…
猫が血尿をする原因としては、
- 膀胱炎(細菌感染、特発性)
- 尿道炎
- 尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)結石
- 泌尿器の腫瘍
- 血液凝固障害
…といったことが多いです。
猫は犬と違って発情に際して出血をしませんが、子宮や卵巣、膣や陰茎などの生殖器にトラブルがあると、血尿を呈すことがあります。
また、『特発性膀胱炎』と言って、ストレスが関与して血尿をすることもあります。
猫においては、膀胱から尿道にかけての下部尿路に疾患が生じやすく、『下部尿路疾患;FLUTD』と呼ばれることもあります。
鮮血、ピンク色、茶色…などさまざまな血尿
ひとえに血尿と言っても、鮮やかな赤い色である鮮血の場合や、ドロッとした血餅が出る場合、薄いピンク色に見えるケースなど、さまざまあります。
なかには、陰部が茶色く汚れている程度や肉眼では分からないこともあり、『血尿だ!』と気がつかないときもあります。
そのため、症状がない場合には、以下でお伝えする定期的な尿検査が重要となるのです。
なお、一見血尿に見える『血色素尿』は、赤血球が急速に壊されている危険な状態であり、血尿とは区別されます。
猫が血尿をするときには、頻尿・排尿痛がみられることも多い
猫が血尿をするときには、
- 頻尿(何度もトイレに行く、少量しか出ない)
- 排尿痛(排尿時にギャーと大きな声で鳴く)
- 粗相(トイレ以外での排せつ)
- トイレから出てこない、うずくまっている
などといった症状が、あわせてみられることも多いです。
なかには、嘔吐や下痢、食欲不振などの症状を示す子もいます。
また、二次的に尿道閉塞(尿道が結石や炎症産物によってつまってしまう病気)になった場合には、尿が全く出ず、
- けいれん
- 虚脱
- ショック状態
…となることもあります。
ただ、全く無症状であり、検査にてたまたま血尿が見つかるケースも多いです。
猫が血尿のときに行う検査~尿検査が重要!
猫が血尿のときには、当然ながら『尿検査』が必要となります。
尿を顕微鏡で観察したり、試験紙を使用することで、
- pH
- タンパクの有無
- 比重
- 細胞や結晶の確認
などを行います。
また、細菌培養検査や薬剤感受性試験といって、尿中に含まれる細菌を同定したり、『どういった薬が効くか?』を判断する検査もあります。
また、一般状態や飼い主さんの稟告によっても検査内容は異なります。
つまり、明らかに状態が悪いときや、「ここ最近よく水を飲む」「食欲がなく、嘔吐もある」などの場合には、
- レントゲン検査
- エコー検査
- 尿路造影
といった検査も行います。
猫の血尿の治療法は原因により異なる~家でできる方法もお伝え
猫が血尿をした場合の治療法は、原因によって異なります。
つまり、
- 細菌感染の場合には、抗生物質の投与
- 結石や腫瘍の場合には、食事療法や外科的摘出を考慮
- ストレスが関与している場合には、サプリメントや食事の変更
といったことを行います。
また、対症療法として、消炎剤や止血剤、ビタミン剤などの投与をすることもあります。
ただ、原因が分からずに血尿であることもよくあります。
そのため、猫で血尿が見られた場合には、以下のこともあわせて行うことが多いです。
水をよく飲ませる
泌尿器トラブルに際しては、飲水をうながすことはとても重要です。
尿として、細菌や結石の排せつを試みる、濃度を薄くするということですね。
ドライフードのみを与えている場合には、ウェットフードも併用するようにしましょう。
ウェットフードは、その成分の70~80%程度が水分であり、嗜好性もよいため、手軽に飲水量の増加につながります。
加えて、
- 水飲み器を変更する(プラスチック製→陶器製、ステンレス製→陶器製など)
- 水飲み器の高さを変更する(高さを出す方が飲みやすい)
- 流れる水をあげる(水道の水を飲ませてあげてもOK)
- ウォーターファウンテンを用いる
- 水の置き場所を変える(うるさいところや怖い思いをした場所などはNG)
- 部屋のあらゆるところに水を置く
- ぬるま湯にする
- ちゅ~るなどで味をつける
などを行うことで、水をよく飲んでくれることが多いです。
そして、その水は常に新鮮なものがよいですので、なるべく1日に1回(できれば2,3回)は交換するようにしましょう。
キャットフードの変更をすることもある
尿路結石や特発性膀胱炎の場合には、食事療法を併用することもあります。
尿路結石の場合には、結石の種類、すなわち、ストルバイト結石症かシュウ酸カルシウム結石症かによって食事の内容が異なります。
ストルバイト結石は、大きさによっては、食事で溶ける可能性もあります。
特発性膀胱炎の場合には、猫が落ち着く成分である加水分解ミルクプロテインやトリプトファンが増量されている商品(『CLT』などの表記あり)もあります。
これらは、『療法食』と言い、獣医師の指示が必要となる食事です。
主治医の先生と相談して決めてみてくださいね。
トイレ環境を見直してみる
猫のトイレ環境をよくすることで、泌尿器トラブルを軽減できる可能性があります。
猫が気に入るトイレ環境とは、
- 大きさが体長の1.5倍以上ある
- 鉱物の猫砂(細かい猫砂)がふかふか
- アクセスがしやすい(寒い・暑い場所や遠い場所、暗いところなどはNG)
- うるさい音がしない(洗濯機の横などはNG)
- カバーがない(においがこもるため;逆にカバー好きな子もいる)
- 頭数+1個以上のトイレ(汚れても別のトイレを利用できる)
といったことがあります。
もちろん、清潔にすることも大事。
何日も掃除していなくて、においのするトイレはNGです。
愛猫のトイレ環境を今一度見直してみましょう。
ストレスをなくす
ストレスが関与して膀胱炎となることもあります。
そのため、一緒に遊んだり、キャットタワーやキャットウォークなどを用意して、猫がストレスなく過ごせる空間を作ってあげましょう。
「一緒に遊ぶ時間がなかなかとれません…」
という場合には、自動で動くおもちゃを用いたり、名前を呼びながらなでてあげるだけでもOK。
愛猫と楽しいふれあいの時間を作ってあげましょう。
サプリメントを用いる
泌尿器用のサプリメントを用いることも方法のひとつです。
サプリメントは、薬ではなく、あくまでも『食品』としての位置づけとなります。
それゆえ、必ず効く!というものではありませんが、泌尿器トラブルを生じにくくする可能性はあります。
サプリメントはたくさんの種類があり、動物病院によっておすすめしているものは異なりますので、主治医の先生にご確認くださいね!
太らせない
『肥満は万病のもと』とも言いますが、まさにその通りです。
猫の泌尿器トラブルは、太っている子で生じやすい傾向があります。
そのため、ぽっちゃり体系の子の場合には、ダイエットをする必要があります。
『愛猫が太っているかどうか?』はBCSという指標で判断します。▼
ダイエット方法についても書いてありますので、ご参照くださいね。
猫の血尿は、治りづらく、繰り返しやすい(再発しやすい)
原因にもよりますが、猫の血尿は治りづらく、再発しやすいことが多いです。
特に特発性膀胱炎においては、原因が分からないことも多いため、長期的に止血剤や消炎剤を飲むこともあります。
また、
- そもそも薬が合っていない
- 薬を飲む期間が足りない
- 原因を取り除くことができない
…といった理由がある場合もあります。
例えば、薬剤感受性試験をしたり、治ったと思ってももう少し薬を続けてみたりと対応することもあります。
「いろんな検査をしているのに、原因が分からない…」
「対症療法だけでよくなるのかな…?」
と不安になることもあると思いますが、根気強く治療をしていくようにしましょう。
猫の血尿の予防法~やはり尿検査が重要
猫が血尿にならないようにするためには、定期的な尿検査が重要となります。
尿検査は、猫が動物病院に行かずともできる検査であるため、愛猫へストレスがかからずできることが特徴です。
また、尿から得られる情報はとても多いですので、症状がなくとも行うようにした方がよいでしょう。
猫のおしっこはシステムトイレの場合には、トイレシートを除いてスポイトなどで取ることで、とても簡単に行えます。
以下の記事もご参照くださいませ。▼
採った尿は、冷蔵庫にて保管しておくことで、翌日まで検査可能となります。
猫が血尿をしているとき、動物病院に行くタイミングとは?
猫が血尿をしているとき、できることならすぐに動物病院に伺い、原因を特定してあげることで、スムーズな治療と対策が行えます。
ただし、忙しいときや夜の場合には、様子を見るケースもあるかもしれません。
一般的には、元気や食欲があって、かつ、明らかに大量の鮮血である場合やおしっこが1滴も出ないような場合でなければ、一晩様子を見てあげても大丈夫なことが多いです。
この場合には、排尿があるかどうか(少量でも合わせればある程度の量が出ているかどうか)?ぐったりしていないかどうか?については、しっかりチェックしてあげるようにしましょう。
不安な場合や、おしっこが全く出ていない、吐いたり調子が悪そうな場合には、受診してもらったほうが安心ですね。
オス猫の血尿の場合には、より慎重に
オス猫の場合には、尿が出なくなってしまう病気である尿道閉塞になりやすい傾向があります。
そのため、様子を見る場合には、少量でも排尿があるかどうかは、より注意してみてあげましょう。
もちろん、メス猫の場合にも、吐いたりがないか?食欲や元気はしっかりあるか?は、しっかりチェックしてあげましょうね。
【まとめ】猫の血尿の原因はストレスかも?繰り返す・治らないことも多い理由を獣医師がお伝え!
冬場は、血尿を含めた泌尿器トラブルが多く発生します。
細菌感染や結石がある場合、ストレスによっても血尿は生じえます。
『おしっこはしっかり出ているのか?』『元気や食欲は問題なくあるのか?』
日頃から愛猫の排尿や体調についてしっかりチェックしましょう!