「短頭種(たんとうしゅ)って麻酔が危ないって聞くけど…」
「ガアガア、フゴフゴという呼吸をします…」
「いびきかくけど正常なの?」
など、パグやフレンチブルドックなどの短頭種の飼い主様は、愛犬の息づかいに不安を感じることは多いと思います。
先日、以下のツイートをしました。▼
暑くなってきたので熱中症には十分にお気を付けください😊
特に、鼻ぺちゃ犬種のパグやフレブル、ボストンなどの「短頭種」は、呼吸がしづらく熱中症になることが多いです。
フゴフゴ、ゼエゼエといった呼吸音、よだれが多い、体が熱いなどは熱中症の症状。
様子をみつつ、冷房で室温25-28℃程度に。— トラまりも@まりも動物病院 (@toramarimo_blog) June 12, 2021
暑くなってきたので熱中症には十分にお気を付けください
特に、鼻ぺちゃ犬種のパグやフレブル、ボストンなどの「短頭種」は、呼吸がしづらく熱中症になることが多いです。
フゴフゴ、ゼエゼエといった呼吸音、よだれが多い、体が熱いなどは熱中症の症状。
様子をみつつ、冷房で室温25-28℃程度に。
短頭種の愛犬を飼っている飼い主様は、一緒に生活する上で注意することがたくさんあります。
3分で読み終わるので、ぜひ読んでみてくださいね!
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目次
犬の短頭種気道症候群とは?【呼吸がしづらいことが問題】
ちょっと難しい名前ですが、「犬の短頭種気道症候群(たんとうしゅきどうしょうこうぐん)」とは、短頭種(顔がつぶれている犬種)がかかる、鼻から喉にかけてに発生する病気の総称です。
先天的に、
- 鼻の穴が小さかったり…
- 喉の奥のつくりが狭かったり…
- 気管が小さくて弱かったり…
することで呼吸がしづらくなり、熱中症や突然死など様々な問題を引き起こします。
そのため、短頭種の飼い主様は、愛犬が快適に過ごすために、様々な工夫をしてあげる必要があります。
そもそも短頭種ってどんな種類?
そもそも短頭種とは、
- パグ
- フレンチブルドック
- ブルドック
- ボストンテリア
- チワワ
- マルチーズ
- シーズー
- ペキニーズ
…といった犬種です。
マズル(口吻)が短いことに加えて、頭が丸く、両目が離れていることも短頭種の特徴です。
これらの鼻ぺちゃ犬種は、人間の好みに合わせて偏った交配を繰り返すことで誕生しました。
「かわいい!」「ぶさかわ!」といった特徴を持つ反面、呼吸器トラブルのような欠点も抱えてしまうことになりました。
危険なことがたくさん…短頭種気道症候群はどんな症状が出るの?
鼻や喉が先天的に狭いことにより、
- いびき
- ガアガア、ゼエゼエいう呼吸音
- 努力性呼吸
- 咳
- 呼吸困難
- 運動を嫌う
- よだれがすごい出る
- チアノーゼ(舌が紫色)
- 熱がこもる
- 失神
などの症状が出ることがあります。
また、鼻や喉の問題だけでなく、「気管虚脱」という気管の病気を併発していることも多いと報告されています。
呼吸器以外の症状が出ることもある
短頭種気道症候群では、呼吸器症状以外にも、
- 消化器症状(嘔吐や多量のよだれなど)
- 目や歯の病気
にもなりやすいといった特徴があります。
中でも、胃のトラブルを併発することは多く、短頭種気道症候群の約90%の症例で胃炎を示していたという報告もあります。
この原因は、短頭種では先天的に裂孔ヘルニア(胃が胸の方に飛び出してしまう病気)や幽門狭窄症(胃の出口が狭くなる病気)などになりやすいことが関係しているとされています。
結果として、吐くことがが多くなり、誤嚥性肺炎や慢性的な栄養不良になることもあります。
短頭種は熱中症や麻酔のリスクもある
短頭種といえば、熱中症と麻酔のリスクが有名ですよね。
では、なぜ熱中症や麻酔のリスクが高いのでしょうか?以下で解説していきます。
熱中症になりやすい
短頭種といったら、何よりも熱中症が心配な犬種です。
犬は舌を出してハアハアする呼吸によって熱を発散していますよね。
短頭種は「呼吸がしづらい」という特徴があるので、「熱がうまく放出できない」ということになります。
そのため、余計にハアハアしてエネルギーを使い、さらに暑くなってしまう…という悪循環に陥ってしまい、簡単に熱中症になってしまいます。
ただ、熱中症は対策をすることができる病気です。▼
麻酔が危険
短頭種が「麻酔が危険!」というのも有名かもしれません。
麻酔中は「挿管(そうかん)」といって気道内に酸素を送るチューブが入っているので比較的安全ですが、麻酔をかける前と麻酔から覚めたあとに危険を伴うことがしばしばあります。
理由として、麻酔を入れるときと抜くときは、自発呼吸が浅くなっているからです。
ただでさえ呼吸がへたっぴな短頭種が、酸素をうまく取り入れることができなくなってしまうので、注意が必要なのです。
短頭種の子がみんな危ないというわけではなく、症状がなければ通常どおりの(もちろん気をつけますが)麻酔管理になります。
診断は症状やレントゲン検査、内視鏡などで行う
短頭種気道症候群と診断するためには、
- 見た目や症状、稟告(飼い主様からの申し出)
- レントゲン検査
- 内視鏡検査
などを行うようになります。
また、超音波検査で心疾患はないか?胃や腸など消化器の状態(胃内に異物やうっ滞がないか?)の確認も行います。
場合によっては、X線透視検査をして、喉元の「動き」を観察することもあります。
短頭種気道症候群の治療~手術もありうる
症状が軽度で一時的な場合には、対症療法(症状に合わせての治療)と薬による内科的な治療が基本となります。
具体的には、
- 酸素をかがせたり
- 冷却したり
- 炎症を抑える薬や気管を拡張する薬の投与をしたり
などがあります。
また、短頭種気道症候群は進行性の病気であるため、症状がある場合にはなるべく早く治療や対策をする必要があります。
症状が重度の場合には、手術で対応することになります。
手術には、鼻の穴を広げたり、喉の通気をよくする手術があります。
術前:鼻の穴が小さく、呼吸器症状を示していました。▼
術後:左右の鼻翼を切って鼻の穴を大きくする手術と軟口蓋を短くする手術を行いました。▼
短頭種症候群を悪化させない!【5つの対策とは?】
短頭種気道症候群を悪化させないためには、5つの対策をすることが重要です。
- 太らせない
- 暑さ対策
- 激しい運動はさせない
- 興奮させない性格にする
- 首輪ではなくハーネスにする
すべて重要な対策です。以下で分けて説明していきます!
①太らせない!体重管理が重要
太っていると鼻~喉元が狭くなり、呼吸がしづらくなります。
これによっていびきをかいたり、無呼吸になったり…と睡眠時の異常も生じます。
積極的にダイエットすることが大切です。
春の健診でダイエットを薦められたワンちゃんネコさん😊
ドライフードなら70%程度に減らし、
他の食事を混ぜてるならドライフードのみにして70~80%量に。
回数は3,4回にして空腹感をやわらげる🍚
1週間に体重の2%程の減量まで。
猫は急なダイエットで命に関わる肝リピドーシスという病気になり危険— トラまりも@まりも動物病院 (@toramarimo_blog) April 30, 2021
②暑さ対策~体温の管理をしっかりと!
短頭種にとって暑さ対策はとても大切です。
夏場はしっかり冷房を使用し、室温を28℃程度(暑がる場合は25℃程度)に保つようにしましょう。
ちなみに、扇風機だけではあまり意味がありません。
人は汗をかくことができるので、汗に扇風機の風が当たって涼しく感じます。
一方で、犬や猫などの動物は汗をかくことができませんので、毛皮にぬるい風を当てているだけ…といった感じです。
熱中症かな?ハアハア、ゼエゼエすごいな…という場合には、何よりも冷やすことが重要です。▼
まら、日頃から体温を測って、愛犬の平熱を知っておくことも大切です。
犬の平熱は38.3~39.0℃程度です。
人のように脇では測れませんし、触った感じの熱っぽさでも判断はできないので、犬用の体温計を用いて測るようにしましょう。
③激しい運動はNG!
短頭種の場合、たくさん走ったり、長距離の散歩をしたりなど激しい運動はNGです。
特に夏場は絶対やめてください。
また、ダイエットを兼ねてたくさん運動させる飼い主様もいらっしゃますが、
- 犬は運動ではやせない
- 心臓や関節にかえって負担がかかる
ため、運動は適度にとどめることが大切です。
④興奮しやすい性格は直して
短頭種は、興奮しやすい子が多い印象があります。
そもそも呼吸がしづらいのに、それに興奮が加わると、余計に呼吸がしづらくなってしまいます。
興奮をあまりさせないように、子犬のうちからしっかりしつけていくようにしましょう。
⑤首輪ではなくハーネスがいい
首輪でのお散歩は、ダイレクトに喉元にダメージが及んでしまうので、絶対に控えた方がいいです。
また、胴輪においても喉元に負担がかかってしまう場合もあるので、気管に負担のかからないハーネスに変えることも方法の一つです。
【まとめ】犬の短頭種気道症候群の症状や5つの対策を解説!
ガアガア、ゼエゼエいう呼吸やよだれがダラダラ…といった症状は、短頭種気道症候群の可能性があります。
体重や温度管理、興奮しないようなしつけをしっかり行いましょう。
短頭種気道症候群は、進行性の病気のため、手術を行ったとしても再発や悪化することもしばしばあります。
短頭種を飼育する際には、愛犬の「呼吸の様子」をよく把握しておくようにしましょう。
【参考書籍・文献】
- CAP10月号,緑書房,2014,p7-24
- Lorenzi D,Bertoncello ,Drigo M,2009.Bronchial abnormalities found in a consecutive series of 40 brachycephalic dogs.J AmVet Med Assoc 235,835-840.