暑くなってくると心配な熱中症。
特に、昨今の夏場は、『異常気象』と言えるほどの猛暑となっています。
「どんな症状が熱中症なのか?」
「熱中症が疑われるときはどうすればいいのか?」
など、犬の熱中症に関わる不安や疑問は多いと思われます。
■本記事の内容
- 犬の熱中症の原因
- どんな症状が出るのか?
- 熱中症の対処法と予防する方法
熱中症は亡くなってしまうこともある怖い病気です。
原因や症状、対処法をあらかじめ知っておくことが予防につながります。
目次
犬の熱中症の原因は『暑い環境に長時間いた』
犬の熱中症とは、高温多湿の環境下で、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調整がうまくできなくなることで発症する病気です。
熱中症になってしまう原因として、
- 高温多湿下に長時間いる
- 暑い中での過度の運動・散歩
- 長時間お水が飲めない…
- 体にこもった熱がうまく抜けない…
などがあり、
- 短頭種(パグやフレンチブルドック、シーズーなど)
- 長毛種
- 高齢、若齢
- 心疾患や呼吸器疾患、腎臓病がある
- 太っている
- 大型犬
といった子たちが熱中症になりやすく、より注意が必要です。
「うちは室内飼いだから大丈夫!」というのは全くなく、室内でも熱中症になることはあります。
犬の熱中症の症状は「ハアハア」だけではない!
「ハアハアが止まらないから、熱中症かしら…?」
というお問い合わせはよくあります。
もちろん、ハアハア(パンティングといいます)も症状の一つですが、他にも、
- 体が熱い
- 嘔吐や下痢
- ふらふらで歩けない、立てない
- よだれがすごい
- 落ち着きがない
- ドキドキがすごい
- 粘膜がうっ血、充血している
- 意識がない
- けいれん
など、症状は様々あります。
「なんとなく元気がない…」という症状が『実は熱中症だった!』ということもあります。
ただ、ハアハアしていたとしても、必ずしも熱中症というわけではありません。
お腹が痛かったり緊張している場合でも、ハアハアすることがあります。▼
犬の熱中症の診断は、暑いところにいた+体温が高い
暑いところにいて、体温が高ければ(40.5℃以上)熱中症の可能性があります。
わきの下や体を触った感じで熱っぽい…という飼い主様もいらっしゃいますが、基本的には体温(直腸温)を測らなければ診断はできません。
家にペット用体温計を用意しておくことは大切ですし、いざというときのために日頃から測っておくことも重要です。▼
犬が熱中症になったときの対処法・治療法は『とりあえず冷やす』
まずは、クーラーの効いている室内に連れて行き、水が飲める状態の場合は、積極的に飲ませてあげましょう。
ふらふらで意識レベルが低下している場合には、タオルをかけてその上から水道水の汲み水(常温でOK)をかけます。
そして、扇風機やうちわで仰ぐなどして風を送ってあげます。
体表の水分は、時間とともに温度が上昇し、また乾燥をしてくるため、タオルの交換は定期的に行いましょう。
凍った保冷剤をタオルでくるんで、太い血管の通っているわきの下や鼠径部にはさんで冷却をしてあげてもいいです。
特に氷水である必要はありません。
むしろ冷たすぎると、皮膚表面の血管が収縮して、熱放散がうまくできなくなってしまい逆効果です。
『シバリング』という、体温が下がったときに、筋肉を動かすことで熱を発生させ、体温を保とうとする現象(体が震えたり、口がガタガタ震えること)もみられてしまいます。
体温計を使いながら体温を下げ、過度の冷却による低体温症にも注意しましょう。
39.5度程度まで下がったら、体を乾かすようにしましょう。
意識レベルが低下しているときは、動物病院へ行く必要があります。
動物病院へ行く道すがらも、しっかり冷却(車は冷房でしっかり冷やす)しながら行きましょう。
動物病院で行う冷却処置も、基本的には上記と変わりません。
毛が分厚い場合には、毛刈りや入水(洗面台や浴槽の中に入れる)による冷却処置を行います。
同時に、血液検査や凝固検査、尿検査などを行い、点滴処置も開始します。
DIC(播種性血管内凝固)や意識障害、循環障害や急性腎不全などがある場合には、その治療も行います。
熱中症の死亡率
熱中症が原因で動物病院を緊急受診する犬の死亡率は約50%であり、多くは受診後24時間以内に死亡するというデータもあります。
予後不良因子のひとつに、動物病院の受診が遅れること(症状の発現から90分以上経過)というこもあり、発見したらすぐに動物病院へ連絡を入れることが極めて重要です。
犬の熱中症予防と対策~涼しく!+水をたくさん飲ませる!
熱中症の予防はクーラーや扇風機を使って涼しくすることにつきます!
室温は28℃程度(←エアコンの設定温度ではなく、あくまでも室温)にするといいですが、体型や年齢・環境によっても異なるので、ペットの様子を見て決めるようにしましょう。
詳しくはこちらをご参照ください。▼
加えて、
- 水をいろんな場所に配置する
- 玄関やお風呂場など涼しい場所に行けるようにする
- ペットカメラで留守中でも愛犬の様子を見る
ようにするとより安心です。
また、停電などで電気の供給が絶たれる可能性もあるので、真夏は冷却マットやアイスノン(誤食に注意)、冷凍ペットボトルなども用意しておくといいでしょう。
そして、水を飲ませることはとても重要です。
「暑いと思って水を出すけど、全然飲まないんです…」っていうのは実によくあります。
基本的に、
- 元気食欲があって
- 排便、排尿をしっかりしていて
- 水があるのに飲んでいない
という場合は単純に欲してないことがほとんどです。
それでも、なんとか水を飲んでほしいですよね…
こちらの記事を読めば、確実に水を飲んでくれるようになります!▼
十分に暑さ対策をして、快適な楽しい夏を過ごしましょう!
【参考資料】
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,犬の治療ガイド2020,EDUWARD Press,p76-p78