「水を飲まないけど、脱水しないかしら…?」
「愛猫が吐いているけど、脱水が心配です…」
「脱水しているか、確認する方法はありますか?」
など、愛猫が食欲がない・水を飲まないなどの場合には、脱水症状にならないか?心配ですよね。
■本記事の内容
- 猫の脱水症状の確認方法
- 脱水になる原因や症状
- 飲水・点滴などの脱水の治療と対策
愛猫が脱水症状かも…という飼い主様は、あわてず読んでみてください。
目次
猫の脱水症状とは?
愛猫が水を飲まなかったり、嘔吐をしてしまった場合には、脱水を起こさないか不安ですよね。
子猫やシニア猫、なにかしらの病気で治療中の場合の子では、体調不良で一気に脱水してしまうこともしばしばあります。
そもそも脱水とは、体の水分が少なくなっている状態で、
- 被毛がバサバサ
- 皮膚の弾力がなくなる
- 眼がくぼむ(眼球陥没)、目やにがかたくなる
- 食欲不振
- よだれ
- けいれん
- 呼吸が荒い
- 心音強盛(心臓の音が強くなる)
- 歯ぐきが乾燥する(つやがなくなる)
- 排尿回数の増減
…といった様々な症状がみられます。
極度の脱水は、循環血液量の減少によってショック状態となり、死亡することもあります。
猫は砂漠生まれの動物なので、比較的脱水に強い動物ですが、それゆえ症状をみせたときには、脱水が進行している可能性もあります。
脱水の確認方法~背中で皮膚テント(つまみ)テスト;ツルゴールテスト
猫の背中の皮膚をつまんで離し、脱水状態を確認するテスト方法を『皮膚テント(つまみ、ツルゴール)テスト』といいます。
離してから、皮膚が元に戻るまでの時間を計測します。
水分が足りている猫においては、つまんだ皮膚はすぐに元通りに戻ります。
一方で、脱水している猫では、皮膚の弾力が低下するため、元に戻るのに時間がかかります。
ツルゴールテストのみでの脱水評価の一例▼
脱水程度 | 皮膚ツルゴールテスト | 脱水 | 臨床症状 |
軽度 | 5秒以下 | 5%以下 | 変化なし |
6% | 起立可能であるが全体的な元気消失 | ||
中度 | 6秒 | 8% | 眼球陥没、介助にて起立可能、活動性の大幅な低下 |
重度 | 7秒以上 | 10~12% | 四肢と皮膚の冷感、起立不能 |
12~15% | 死期切迫、虚脱状態 |
ただし、痩せている猫やシニア猫では、脱水していなくても皮膚の戻りが遅い傾向にあることに注意が必要です。
また、太っている子においては、皮下脂肪により皮膚が戻りやすい傾向にあるため、過小評価してしまう場合もあります。
そのため、普段からチェックしておき、『いつもとの違い』を知ることが重要です。
ツルゴールテストと他の身体検査所見をあわせて、脱水評価をすることもあります。▼
脱水率 | 臨床症状、身体検査所見 |
<5% | 特になし |
5% | 口腔粘膜の乾きがある、頻脈や呼吸が速いなどはない |
7% | 軽度~中程度の皮膚弾力の減少、口腔粘膜の乾き、軽度の頻脈 |
10% | 中等度~重度の皮膚弾力の減少、口腔粘膜の乾き、明らかな頻脈、血圧低下 |
12% | 重度の皮膚弾力の減少、口腔粘膜の乾き、ショック状態 |
猫が脱水症状を引き起こす原因
猫が脱水症状となる原因として、
…などがあります。
こういった病気がなかったとしても、体力のない子猫やシニア猫などにおいては、一過性の食欲不振で脱水を引き起こしてしまうことがあります。
また、心臓病や発作などで治療中の子は、利尿剤を使用して、意図的に脱水させることもあります。
この場合には、主治医の先生の指示に従い、飲水制限をする場合もあります。
脱水の治療と対策~飲水・皮下補液・静脈点滴
軽度の脱水(5%以下)の場合には、飲水を促すことで、改善する場合もあります。
とはいっても、なかなか水を飲んではくれないですよね…
猫に水を飲ませるためには、ウェットフードにしたり、流れる水にしたり…と様々な方法があります。
こちらの記事をご参照ください。▼
脱水の程度が中程度以上の場合や、自力での飲水ができない場合には、点滴による治療が必要となります。
点滴には、静脈点滴と皮下点滴(皮下補液)があり、より重度の場合には、静脈点滴を行います。
ちなみに、皮下補液をして帰ると、おなかや足がタプタプになることがありますが、正常なので大丈夫です。▼
【まとめ】【猫の脱水症状】確認方法や原因と対策などを獣医師が解説!
愛猫が脱水をしているかは、皮膚をつまんだ検査(ツルゴールテスト)や眼球のくぼみ、口腔粘膜の乾きなどの様々な指標をあわせて評価します。
脱水になる原因としては、腎臓病や糖尿病などの基礎疾患がある、下痢や嘔吐などの日常的な症状でもなることがあります。
脱水の程度によっては飲水を促すことで対応しますが、中度~重度の場合には点滴による治療が必要となります。
愛猫の様子を日頃からよく観察し、変調があった場合には、動物病院に連絡をしましょう!
【参考資料】
- 長江秀之,織間博光,慢性腎疾患における皮下輸液,動物臨床医学22(1)7-11,2013
- 佐野忠士,獣医師動物看護師のための輸液超入門,interzoo,2016,p21-22
- CLINIC NOTE,No106,2014,5月号
- 小林正行,山根義久,小動物最新外科学体系2 救急治療,interzoo,2006,p72-87