「地震や雷・花火などで、震えてたり、元気がなくなってしまいます…」
「ペットが音や地震を怖がるときの対策はありませんか?」
「ずっとハアハアしているのですが、これって治りますか?」
犬や猫のなかには、地震や雷などを速やかに察知して、極端に怖がる子がいます。
先日、以下のツイートをしました。▼
今日は雷⚡や地震など、犬猫さんも不安や恐怖を感じていると思います。
震えたり、ハアハアしたりなどの「恐怖症」は小型犬で多いですが、抱っこしたりかまったりするのではなく、飼い主さんがいつも通り過ごす(ある程度無視)することも大切。
サンダーシャツという不安をやわらげる服もあります😊
— トラまりも@まりも動物病院 (@toramarimo_blog) May 1, 2021
今日は雷⚡や地震など、犬猫さんも不安や恐怖を感じていると思います。
震えたり、ハアハアしたりなどの「恐怖症」は小型犬で多いですが、抱っこしたりかまったりするのではなく、飼い主さんがいつも通り過ごす(ある程度無視)することも大切。
サンダーシャツという不安をやわらげる服もあります。
■本記事の内容
- 怖がったり、不安になっている症状ってどんなの?
- 震えたり、怖がったりするのを治す方法ってある?
- 「行動修正法」という薬を使わない治療法
「愛犬や愛猫が大きな音や地震に不安を感じているので、治してあげたいな!」と思う飼い主様は、ぜひ読んでみてください。
▼ペットの病気やしつけ、日常ケアなど最新情報を発信しています。▼
読んでみて興味があったら、トラまりも(@toramarimo_blog)をフォローしてくれると嬉しいです!
目次
犬猫が雷や花火・地震を怖がる原因とは?
犬や猫などの動物は、雷や花火などの大きな音や地震などの普段とは違う状況にストレスを感じたり、パニックになってしまうことがあります。
恐怖や不安を感じたりすることは、多少なりともどんな子でもあります。
ただ、それが過剰になってしまうと、恐怖症(危険な状況を避けるために反応が過度になっている状態)やパニック発作(恐怖や不安に対して起こる極端な行動)といった病気を引き起こしてしまいます。
- 遺伝(猫の場合は父系の影響を受ける)
- 不適切な飼育環境(安心できる場所がない、母親と早くに引き離されたなど)
- 社会過不足(子犬・子猫のときに様々な経験をしなかった)
- トラウマ(強い恐怖体験があったなど)
- 飼い主との関係(過保護、過干渉など)
- 高齢
そもそも犬や猫など動物は聴覚に優れているため、音に対して人間よりも大きく反応することは当然だとも言えます。
- 人:2万3000ヘルツ
- 犬:6万ヘルツ
- 猫:6万4000ヘルツ(子猫:10万ヘルツ、出産後の母猫:8万ヘルツ)
恐怖症・パニック発作ではどんな症状が出るの?
犬や猫が恐怖や不安を感じたときにみられる症状は、
- 震える
- 走り回る、落ち着きがない、パニック
- ハアハアしている(パンティング)、呼吸が速い
- よだれが出ている
- どこか狭い場所やすみっこ、タンスの上などに隠れようとする
- 体を丸める、耳や尾が下がっている
- 飼い主に付いていく
- 外に出たがる、脱走する
- 下痢や嘔吐など消化器症状、食欲がなくなる
- 粗相をしてしまう、スプレー行動(猫)
- 何かを壊したり噛んだりなどの破壊行動、攻撃的
- 鳴く(小さな声~大きな声まで)
- 毛をむしったり、指を噛んだり、過剰に舐めたりなど自傷行動
…などとたくさんあります。
分かりやすいのは、大きな音や揺れがあったことで「いつもと違った行動が見られる」ということです。
こういった症状は、実際に地震や雷が起きていなくても、似たような刺激や状況になるだけで、恐怖や不安を感じるようになる場合もあります。
犬猫の恐怖症・パニック発作の診断は鑑別が大事!
上記のような症状は、音や揺れに対する恐怖や不安によるものだけなのか?を鑑別することは重要です。
つまり、
といった「他の病気でそのような症状が出ているのではないか?」を鑑別することが大切です。
また、不安傾向が強くなる病気、例えば甲状腺機能低下症や慢性疼痛がある場合には、不安になりやすいので、何かしらの基礎疾患や併発疾患がないかどうかの判断は重要です。
震えたり、吠えたり…ペットが雷や地震を怖がるときの対処法
地震や雷などの天災に対して怖がるときの対処法は、
- 行動修正法
- 薬物療法
の2つに大きく分けられます。
行動修正法~望ましい行動に変化させる
犬や猫の恐怖症やパニック発作の根本的な解決法は行動修正法です。
行動修正法とは、動物の不適切な行動を、望ましい行動に変化させる方法のことで、具体的には以下の方法で行動を治していきます。
- 大きな音や状況を避けられるのなら避ける
- 犬や猫が逃げられる(リラックスできる)環境を作る
- 猫の場合は、部屋全体が見渡せる高い位置に安心スペースを作る
- 意識を違うものに向ける(おやつやおもちゃを与える)
- 飼い主の行動はいつもと変えない(犬や猫を自由にする、なだめたりしない)
- 吠えたり、粗相をしても罰は与えない
- 日頃から知育玩具を使って、様々な刺激を与える
- 飼い主自身が平常心でいる
飼い主様がなだめたり、抱っこしたりなどの反応をしている場合も多く、それはやめるようにしましょう。
同様に、怖くて隠れている愛犬・愛猫を無理に引っ張り出すのもダメです。
また、音に慣らそうとして、大きな音をあえて聞かせるのは解決にはならないのでNGです。
小さな音から少しずつ慣らしていき、「音が聞こえたらおやつ」というように、いいことがある!と覚えさせるのは試してみてもいいかもしれません。
雷を怖がる場合には、音量を上げてテレビや音楽などを流すのも方法の一つです(雷の音を回避する)。
薬やサプリメント、フェロモンを用いた治療
健康を害するレベルの症状が出たり、鳴き声などでご近所からの苦情がある場合には、薬による治療も併用します。
以下の薬は、神経伝達物質としてのセロトニンやノルアドレナリン、GABAなどの心を落ち着かせる物質のレベルを調整することで効果を示す薬です。
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン
- 三環系抗うつ薬(TCA):クロミカルム(クロミプラミン塩酸塩)、アミトリプチン塩酸塩
- セロトニン₂A受容体拮抗・再取り込み阻害薬(SARI):トラゾドン塩酸塩
- ベンゾジアゼピン系薬:ジアゼパム、アルプラゾラム、ロラゼパム、イメピトイン
- アザピロン系薬:ブスピロン
- 抗てんかん薬:ガバペンチン(作用機序不明)
- サプリメント:ジルケーン(α-S1トリプシンカゼイン)、GABA、アンキシタン
- フェロモン:アダプティル(合成犬安寧フェロモン)、フェリウェイ
- デクスメデトミジンのジェル
どの薬やサプリメントを用いるか、頓服だったり長期投与にするかは、選択した薬やその子の状況によって異なります。
CLT配合(加水分解ミルクタンパクを配合し、L-トリプトファンの含有量を調整;心を落ち着かせる成分の略称)の食事を与えることもあります。
サンダーシャツという、体を適度に圧迫することで不安を解消できる商品も試してみる価値はありそうです(個体差はあります)。▼
【まとめ】犬や猫が地震や雷・花火を怖がるときの対策
犬や猫の恐怖症やパニック発作は、年月の経過によってより激しくなることが多いです。
震えている、過度に吠える、隠れてしまう…など、雷や地震などに恐怖や不安を感じている場合には、なるべく早期からの治療が重要です。
また、愛犬・愛猫に過度に接することで、不安の症状が強く出てしまうこともあります。
適度な距離感を持ち、いつもと変わったことがないか?をよく観察してあげるようにしましょう!
【参考書籍・文献】
- 藤井仁美 CAP 10,緑書房,2017,p84-89
- 太田光明,The ability of animals to anticipate coming earthquakes: allele frequency distribution of the canine CRH gene in 33 breeds,麻布大学雑誌13 14,183-192,2006
- 辻本元他,犬の治療ガイド2020,EDUWARD Press,2020,p1069-1076
- 辻本元他,猫の治療ガイド2020,EDUWARD Press,2020,p829-835