「愛犬が水を飲むとむせます…」
「水飲み器の高さを変えてみたのですが、むせます…」
「水を飲むとき以外は、特にむせないんです…」
など『犬が水を飲むとむせる』というご相談はよくあります。
犬が水を飲むとむせることについて、先日以下のツイートをしました。▼
犬が水を飲むと、むせてしまうことはよくあります。
・がぶ飲み
・飲みかた
・水の温度
・のどや気管、心臓の病気
などが原因です。
頻度が少ない場合には、対策をして様子をみますが、多いor増えてきた場合には、検査が必要です。
ブログで解説しています😊▼https://t.co/yZDTmwXAay— トラまりも@まりも動物病院 (@toramarimo_blog) October 26, 2021
犬が水を飲むと、むせてしまうことはよくあります。
・がぶ飲み
・飲みかた
・水の温度
・のどや気管、心臓の病気
などが原因です。
頻度が少ない場合には、対策をして様子をみますが、多いor増えてきた場合には、検査が必要です。
ブログで解説しています😀▼
■本記事の内容
- 犬が水を飲むとむせる原因
- むせなくする対策・対処法
- 治療が必要な場合
今までは大丈夫だったのに、急にむせるようになった場合には、特に注意が必要です。
愛犬が水を飲んでむせるようになったときには、あせらず読んでみてください。
目次
犬が水を飲むとむせる原因
愛犬が水を飲んだ後にむせてしまう…
あるときは、むせたあとに、「ガー」っとすごい顔で吐こうとする様子をみせたり、たんや粘液の様なものを一緒に出してしまうこともあります。
嚥下(飲み込み)に障害を生じているということで、その原因として、
- 大量に飲んでいる(がぶ飲み)、早飲みしている
- 水が冷たすぎる
- 飲む姿勢がよくない
- 咽頭や喉頭部分に異常がある
- 心疾患や気管支疾患がある
といったことが考えられます。
以下で分けて説明していきますね。
①大量に飲んでいる(がぶ飲み)、早飲みしている
一気飲みをすると、むせる傾向にあります。
人においても、むせてしまうと、
「そんなあわてなくて大丈夫だよ~」
みたいなのがありますが、それです。
また、元来、犬は水を飲むのがへたっぴな動物です。
びちゃびちゃこぼしながら飲んでいる光景が目に浮かぶと思います。
というのも、犬はベロを「し」の字のようにカーブさせて、下からすくうように水を飲んでいるからです。▼
②水が冷たすぎる
水が冷たいと、反射でむせてしまうことがあります。
人においては、『改訂水飲みテスト』という、3mlの冷水を飲んでもらい、嚥下障害がないか?を見るテストがあります。
『体温に近い温度だと最もむせる』という人における資料もあったので、何とも言えませんが、水温もむせに関係するのかもしれません。
③飲む姿勢がよくない
水を飲む姿勢がよくないために、むせてしまうこともあります。
高さのない水飲み器の場合、頭を下に向けて飲水するため、個体によってはむせてしまうこともあります。
また、ノズル式(舌を当てると水が出てくるタイプ)だとむせる子もいます。
④咽頭や喉頭部分に異常がある
喉の部分に異常があってむせてしまうこともあります。
- 軟口蓋過長:口の天井の柔らかい部分が通常より長い病気
- 喉頭虚脱:喉頭の軟骨が変形して、のどを塞いでしまう状態
- 喉頭麻痺:喉頭の筋肉や声帯の動きが障害された状態
- 口鼻ろう管(こうびろうかん):歯周病で上あごの骨が溶けて、鼻に穴が開く病気
- 重症筋無力症:神経から筋肉への指示が伝わらなくなる自己免疫疾患
- 腫瘍
- 炎症や感染
などが考慮すべき疾患です。
軟口蓋過長や喉頭・咽頭虚脱などは、『短頭種気道症候群(たんとうしゅきどうしょうこうぐん)』といって鼻ぺちゃ犬種によく見られる病態です。▼
⑤心疾患や気管支疾患がある
心臓や気管に病気があって、その一症状としてむせていることもあります。
「咳をするようになった…」「ガアガア呼吸をするときがあるな…」など、むせる以外にも症状が見られる場合もあります。
水を飲むとむせてしまうときに行う検査
水を飲むとむせてしまうときは、状況に応じて検査をするようになります。
- 身体検査
- レントゲン検査
- 内視鏡検査
- 透視検査(バリウム検査)
他の症状(食べ物もこぼす、咳など)がある場合には、血液検査や超音波検査、CT検査などもあわせて行うようになります。
水をむせないようにする対策・対処法
たまにむせる程度なら問題ないことが多く、特に対策をしなくても改善する場合もあります。
まず、自宅でできる対策として、
- 一度に大量の水をあげない
- 食器の高さの変更
- ノズルタイプ(ノズルを舌で押すと水が出る)に変更
- 水ゼリーなどとろみのあるものにする
- ウェットフードやふやかして食事を与える
- 水の温度を変えてみる
といったことがあります。
簡単にできる方法が、水分を食事からとってもらう方法です。
食事で水分をとれれば、水を頻回に飲む必要がなくなります。
ウェットフードは70~80%程度が水分なので、食事をむせない場合には、この方法で水をとるといいでしょう。
また、ノズルタイプの水飲み器に変更することで、改善する場合も多いです。
下を向かないで飲めること、ひっくり返してこぼしちゃうこともないので、おすすめです。▼
積極的な治療が必要な場合もある
咽頭や喉頭、心疾患・気管支疾患などの病気がもとで水をむせてしまう場合には、検査したのち、飲み薬やネブライザーなどで治療をする必要があります。
軟口蓋過長症や腫瘍など、器質的な異常がある場合には、手術が適応になります。
また、子犬やシニア犬の場合には、誤飲によって悪い方向にいってしまうこともあるため、原因の追求とともに、むせない対策がより重要となります。
【まとめ】犬が水を飲むとむせる~原因や対策を獣医師が解説!
犬が水を飲むとむせるときには、
- 大量に飲んでいる(がぶ飲み)、早飲みしている
- 水が冷たすぎる
- 飲む姿勢がよくない
- 咽頭や喉頭部分に異常がある
- 心疾患や気管支疾患がある
といったことが考えられます。
愛犬の水の飲み方や、いつからむせるようになったのか?他の症状はないのか?などをしっかりチェックして、対策をしましょう!
【参考資料】
- 戸原 玄,阿部 仁子,中山 渕利,植田 耕一郎,摂食・嚥下障害への対応~摂食・嚥下障害の評価と訓練,日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 5:265-271,201
- 海老原 覚,高齢者の嚥下障害,ドクターサロン56巻2月号(1. 2012)