「愛犬の耳が臭いです…」
「外耳炎によくなるのだけど、原因って何?」
「何度も再発するけど、治療法って合ってるのかな?」
など犬の外耳炎について、どうしてなるのだろう?どうやったら完治するのだろう?と思われる飼い主様は非常に多いです。
先日以下のツイートをしました。▼
犬の外耳炎は、
➡️耳を掻く
➡️耳が臭い
➡️耳の中が赤い、腫れてる
➡️顔を床にこすりつける
といった症状がみられ、悪化すると耳をとることもあります。早めに洗浄、点耳薬をすることでよくなります😊
日頃のケアはコットンにイヤークリーナーをつけて、週に1回程度ぬぐってあげるといいです。#犬
— トラまりも@まりも動物病院 (@toramarimo_blog) January 4, 2021
犬の外耳炎は、
- 耳を掻く
- 耳が臭い
- 耳の中が赤い、腫れてる
- 顔を床にこすりつける
といった症状がみられ、悪化すると耳をとることもあります。
早めに洗浄、点耳薬をすることでよくなります。
日頃のケアはコットンにイヤークリーナーをつけて、週に1回程度ぬぐってあげるといいです。
■本記事の内容
- 犬の外耳炎の5つの原因
- どんな症状や診断法なの?
- 治療法って?外耳炎で手術になる事もある!?【手術写真アリ】
犬の外耳炎は、診察で最も多い病気です。
たかが外耳炎とあなどると、慢性化して手術になってしまうこともある怖い病気です。
愛犬が外耳炎と診断された場合、外耳炎を予防したい!という飼い主様は、是非読んでみてくださいね。
目次
犬の外耳炎って?【外耳炎の5つの原因】
犬の耳は、外耳(がいじ)・中耳(ちゅうじ)・内耳(ないじ)の3部分からなり、そのうち外耳に炎症が起きるのが外耳炎です。
外耳炎は犬にとても多いトラブルで、日常の診察でよく遭遇する病気です。
犬の外耳炎には5つの原因があります。▼
- 垂れた耳、湿潤環境
- 細菌やマラセチア・疥癬などの感染・増殖
- 腫瘍や異物
- 耳を含む皮膚の病気(犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)
- 全身の病気の一症状(内分泌疾患、自己免疫疾患など)
では、それぞれ分けて説明していきますね。
原因①垂れた耳、湿潤環境
犬の耳道は、垂直耳道と水平耳道の2つからなる「L字型」の構造をしています。
犬の耳道はLの形でクキっと曲がっているため、通気がしにくい構造をしています。
さらに大量の耳毛がある場合には、より通気性が悪く、耳の中がジメっとしてしまいます。
また、垂れ耳の犬種やべたっとした脂が多い犬種、例えば、
- コッカー・スパニエル
- キャバリア・キング・チャールズスパニエル
- ミニチュアダックスフンド
- ビーグル
- パグ
- シーズー
などにおいては外耳炎が好発します。
耳毛が多い犬種(シュナウザーやプードルなど)もよくなります。
また、皮膚の病気になりやすい犬種(柴犬やフレンチブルドックなど)も外耳炎によくなります。
原因②細菌やマラセチア・疥癬などの感染・増殖
これもよくあります。
ある種の細菌やマラセチア(カビの一種)などは、常在菌(普通でも皮膚や耳にいる菌)ですが、バッっと増えてしまうことで悪さをします。
また、疥癬(ミミヒゼンダニ)は常在はしていませんが、強い痒みを示すことが特徴で人にもうつることがあります。
- マラセチア→独特の臭いにおい、茶色いべたっとした耳垢
- 疥癬→コーヒーかすのような黒いカサカサな耳垢
- 細菌→黄色いべたっとした耳垢
原因③異物や腫瘍
散歩中に耳に入ってしまった植物の種やゴミが原因で外耳炎になることもあります。
先程まで何もなかったのに、散歩やドックランの後から急に掻きだした場合は、そういった異物の可能性もあります。
また高齢での慢性的な痒みや炎症の場合は、耳の中の腫瘍も考慮します。
原因④耳を含む皮膚の病気
犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、脂漏症など皮膚の病気の一症状として、外耳炎になっている場合もあります。
外耳炎だけでなく、顔面やそけい部など耳以外の部位にも痒みや炎症を起こしていることが多いです。
皮膚疾患を持つ犬は皮膚のバリア機能が低下しているため、感染が非常に起こりやすく、感染性の外耳炎を繰り返してしまうことがあります。
原因⑤全身の病気の一症状
内分泌疾患(ホルモンの病気)、自己免疫疾患などの全身の病気の一症状として外耳炎となっている場合もあります。
犬の外耳炎の症状はたくさんある
犬の外耳炎にはたくさんの症状があります。
- 耳をかく
- 頭をブルブル振る
- 顔を床にこすりつける
- 悪い方の耳が下がっている
- 耳が臭くなる
- 耳が腫れている、赤い
- 耳が厚くなる
- 耳垢の量が増える
- 耳を触ると痛がる、鳴く
傾いていたり、耳の下に毛玉ができていて気付かれることもあります。
ひどくなると、食欲や元気がなくなることもあります。
耳を振ったりこすりつけることにより、耳の毛細血管が切れてしまい、耳がパンパンにはれてしまう「耳血腫」になることもあります。
外耳炎の診断は細胞診
犬の外耳炎の診断は、症状や耳鏡での観察、耳垢の細胞診で行います。
外耳炎がひどいときや繰り返す場合は、レントゲン検査やCT・MRI検査を組み合わせて、耳道内の石灰化や貯留物の確認を行うときもあります。
ビデオオトスコープ(耳用の内視鏡:VOS)という特殊な機械によって、耳の中をより詳しく観察することもあります。
動物病院での犬の外耳炎の3つの治療法
犬の外耳炎は主に3つの方法で治療をしていきます。
腫れていて痛みがあることで、嫌がってしまう場合もあるので、無理に行わないことがポイントです。
エリザベスカラーを使用して、物理的に「掻けない状況」にすることも多々あります。
では以下で分けて説明していきますね。
治療①洗浄
外耳炎になってしまった場合、まずは耳の洗浄を行い、耳垢を取り除くことが重要です。
耳の中にあふれるくらいイヤークリーナーを入れて、耳の付け根をモミモミします。
その後ティッシュで水分を適当に吸い取って、ブルブルさせて…を何回か行います。
治療②点耳薬
洗浄を行ったら、耳に薬を入れて(点耳薬)治療を行います。
- ミミーナ(抗真菌薬:ピマリシン)
- サンベタゾン眼耳鼻科用0.1%(ステロイド:感染がない場合)
- ミミピュア(抗生剤・抗真菌薬・ステロイドの合剤)
- ロメワン(抗生剤)
- モメタオティック(重度の炎症がある場合、抗生剤・抗真菌薬・ステロイドの合剤)
- オスルニア(細菌とマラセチアを倒す、2回で済む;点耳が困難な場合に使用)
- イズオティック(点耳しやすい、マラセチアが多い場合)
- 希釈した軟膏や抗生剤(細菌に応じて作製)
治療③飲み薬
外耳炎がひどい場合には、飲み薬を併用することもあります。
痒みや腫れを取るためにステロイドを、感染がひどいときには抗生剤を…など状況に応じて処方する薬を選びます。
薬には副作用もある
薬には副作用もあります。
点耳薬は局所療法と言えど、ステロイド剤入りを漫然と使用すると、毛が生えなくなったり肝臓の数値が悪くなってしまったりすることもあります。
また、抗生剤の場合は効かなくなってしまうこともあります。
手術で耳道をとることもある【全耳道切除術】
※以下で当院で行った手術の写真が出ますので(ぼやかす処理をしています)、苦手な方はお戻りください。
犬の外耳炎はよくある病気ですが、手術をすることになる症例は滅多にいないです。
ただ、
- なかなか治らない外耳炎
- 耳道に腫瘤がある場合
- 耳道が閉じてしまっている場合
などは、耳道を取る手術をすることもあります。
慢性的な痒みや炎症で、耳の穴がふさがってしまっています。▼
犬の耳は、垂直耳道と水平耳道の2部分からできていると上で説明しましたが、
- 垂直耳道だけ取る手術
- 垂直・水平両方の耳道を取る手術
- 鼓室胞というさらに奥まで取る手術
など症状や画像診断で判断し、どこまで取るかを決めていきます。
今回は、耳の奥の方まで炎症が見られたため、全耳道切除+鼓室胞骨切り術を行いました。
パンパンに腫れてしまっている耳道を取っているところです。▼
耳道切除と言っても、いわゆる耳(耳介)を取るわけではありません。
耳道という耳の通り道を切除するので、見かけ上の耳は残ります。▼
ただ、全耳道切除の場合は鼓膜から根こそぎ取って耳を塞いでしまうため、耳は聞こえなくなってしまいます。
術後は痛みと感染の管理をしっかり行います。
また、垂直耳道のみの切除の場合は、外耳炎の管理を継続することが重要です。
外耳炎にならないために【予防が大切!】
外耳炎は再発をすることが非常に多いので、定期的に耳垢の除去と洗浄治療を行う必要があります。
また自宅での耳掃除での予防と早期発見も重要です。
■オーツイヤークリーナー
オーツイヤークリーナーは天然のオーツ麦から作られています。
低刺激なため日常ケアには最適です。
■エピオティック
洗浄力の強いイヤークリーナーです。
アルコールは入っておらず、すっきりした香りが特徴です。
他にも耳垢を溶かすタイプのクレンジング剤や脱脂作用の強いイヤークリーナーもありますが、日常ケアとして使用するのは難しいので、主治医の先生とご相談ください。
【まとめ】犬の外耳炎の5つの原因と治療法
犬の外耳炎は、
- 垂れた耳、湿潤環境
- 細菌やマラセチア・疥癬などの感染・増殖
- 腫瘍や異物
- 耳を含む皮膚の病気(犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)
- 全身の病気の一症状(内分泌疾患、自己免疫疾患など)
が複雑に絡み合って発症します。
誰もが一度は外耳炎にかかったことがあると思います。
外耳炎は自宅での定期的な耳掃除と早期の発見が大切です!
ひどくなると手術になる事もある怖い病気なので、今一度愛犬の耳の様子をよく見てあげましょう。