「愛犬がチョコレートをなめたけど、大丈夫?」
「チョコレートを食べたけど元気!様子を見てもいい?」
犬がチョコレートをなめる、食べてしまうことはよくあります。
先日、以下のツイートをしました。▼
「犬(または猫)がチョコレート食べました…」はかなり多いです。
中毒には個体差があるので、どれくらいなら大丈夫という指標はないです。なめた程度や少量なら様子を見るときもありますが、病院で吐かせた方が確実です。
計算上は、体重3kg程の犬ならダークチョコ35g程度食べると危険⚠️#犬 #猫
— トラまりも@まりも動物病院 (@toramarimo_blog) February 4, 2021
「犬(または猫)がチョコレート食べました…」はかなり多いです。
中毒には個体差があるので、どれくらいなら大丈夫という指標はないです。なめた程度や少量なら様子を見るときもありますが、病院で吐かせた方が確実です。
計算上は、体重3kg程の犬ならダークチョコ35g程度食べると危険。
■本記事の内容
- 犬のチョコレート中毒の症状とは?元気があるなら様子見?
- どれくらいの量食べると危険?少量やなめた程度なら大丈夫?
- 動物病院に行くタイミングは?
愛犬がチョコレートを食べてしまった場合には、あわてず読んでみてください。
一刻も早くどうすればいいか知りたい方は、【まとめ】へジャンプ!
目次
犬のチョコレート中毒の原因は『テオブロミン』
犬のチョコレート中毒は、成分の一つである『テオブロミン』というカフェインに似た物質によって生じます。
犬においては、テオブロミンの分解がヘタな子が多く、そのため、チョコレートを食べることで、テオブロミンがからだの中に貯まってしまいます。
チョコレートの中には、少量ですがカフェインも含まれているため、愛犬がチョコレートを誤食すると、以下でお伝えする症状が出ることがあります。
犬のチョコレート中毒の症状~興奮やふらつき
チョコレート中のテオブロミンという成分は、中枢神経の興奮させたり、心臓に影響を与えます。
そのため、
- フラフラする、チック(目をパチパチする)などの神経症状
- 胸を触るとバクバクしている、不整脈が見られる
- ウロウロして落ち着きがない
- ハアハアしている
- 異常な興奮
- 震えやけいれん
などの症状が出る場合があります。
コーヒーを飲んだときにトイレが近くなるように、犬でも頻尿(トイレになんども行く)が見られることもあります。
また、
- 下痢や嘔吐
- 食欲や元気がない
- 水をよく飲む
- 胃の拡張
といった、非特異的な症状が見られることもあります。
そのため、チョコレートをなめた・食べたのち、いつもと違った症状が見られた場合には、チョコレートによる影響の可能性があります。
以前こんなことがありました。
「体重4kgの子が1×2cmくらいのダークチョコレートを5個食べてしまって、半日くらい経ってから、震えて元気がない。」とのことでした。
飼い主様に思い当たることがチョコレートしかなかったため、チョコレート中毒と判断し、来院していただきました。
また、チョコレート中の脂肪成分によって急性膵炎を引き起こすこともあります。
なめた程度・少量なら大丈夫?犬のチョコレートの中毒量は?
一般的には、体重1kg当たり約100mgのテオブロミンを摂取すると、中毒症状が出るといわれています(80mg/kg以上で注意が必要)。
テオブロミンは、
- ホワイトチョコレートには約0.05mg/g
- ミルクチョコレートには約1.0~2.1mg/g
- ダーク(ビター)チョコレートには約4.4~8.8mg/g
- ブラックチョコレートには約15mg/g
- ココアパウダーには約4.6~38mg/g
含まれています。(Bates N et al,2015改変)
【例えば体重3kgの犬の場合】
中毒量は3×100mg=300mg(240mg以上で注意が必要)となります。
ダークチョコなら、34(300÷8.8)~68(300÷4.4)g食べると中毒症状が出ると算出されます。
森永製菓のダース〈ビター〉の場合、1粒約3.5gなので10個食べると中毒症状が出ることになります。
ただし、体重1kgあたり20mg程度のテオブロミンの摂取でも、軽度の症状が出るとの報告もあります。
そのため、体重が3kgであれば60mgのテオブロミン、すなわち7~14gのダース〈ビター〉という計算になるため、2個以上食べた場合は、注意して見てあげる必要があります。
上記の通り計算すると、なめた程度や食べたのが少量の場合は、中毒症状が出る可能性は極めて低いと言えます。
症状に注意しながらよく見てあげ、変調があった場合は動物病院に連絡しましょう。
犬のチョコレート中毒の治療法~吐かせる!
犬のチョコレート中毒に対する有効な解毒薬はありません。
そのため、犬がチョコレートを食べた場合は、吐かせて対応します。
吐かせる処置は、できる限りすぐ、難しい場合でも3,4時間以内がいいです。
少量・なめた程度であれば、来院せず様子を見ることもあります。
その場合、牛乳やヨーグルトを食べさせたり(胃にコーティングをしてチョコレートの吸収を抑える)、テオブロミンの吸着を期待し、炭(薬用炭)を飲ませることもあります。
ただ、大量に食べた場合には、誤食からの時間にかかわらず受診をし、エコーやレントゲン検査のち(胃の中にどれくらい残っているのかを確認する)、吐かせる処置等が必要となります。
加えて、点滴や胃洗浄をすることもあります。
犬のチョコレート中毒について~元気があれば様子見?よくある質問
犬のチョコレート中毒について、よくある質問をまとめました。
チョコレート菓子の場合は?
チョコクッキーやチョコボール、手作りのチョコレート菓子などは、チョコレート含量が不明な場合が多いです。
純粋なチョコレートに比べると、中毒症状が出る可能性は低いですが、あまりにも大量に食べていた場合は、動物病院で吐き出させたほうがいいでしょう。
症状が出るまでの時間は?
犬がチョコレートを誤食してから症状が出るまでの時間は、早くて2~4時間後となります。
ただ、犬はテオブロミンの分解速度がおそく、からだに貯まりやすいため、3,4日は注意が必要です。
元気があれば様子を見てもいい?
食べた量が大量でなく、いつもと変わらない元気や食欲があり、嘔吐や下痢といった症状が見られない場合には、お家で様子を見ることも方法の一つとなります。
上記でもお伝えしましたが、3,4日はしっかりと様子を見て、いつもと違ったことがあれば、速やかに受診をしましょう。
動物病院に行くタイミングは?
それは、飼い主様が不安だと感じるときは、いつでも行くべきです。
上記でお伝えしたことはあくまでも概算であり、絶対大丈夫という量はありません。
「吐かせた方がいいかな?」「様子を見ても大丈夫かな…」と不安になるようでしたら、動物病院にうかがってもらうことが安心です。
【まとめ】犬がチョコレートを食べたが元気!なめた・少量なら大丈夫?獣医師が解説
犬がチョコレートを食べたとき、基本的には動物病院で吐かせる処置をした方がいいです。
少量・なめた程度であれば、吐かせる処置をせずに様子を見ることもあります。
ただ、中毒には個体差があります。
そのため、少量・なめた程度であっても、絶対に大丈夫という表現はできません。
心配であれば、動物病院で吐かせる処置を受けるようにしましょう。
誤飲は愛犬の手の届かないところに物を置くことで、防ぐことができます。
今一度注意しましょう!
【参考資料】
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,犬の治療ガイド2020,EDWARD Press,2020
- 誤食・中毒の緊急対応に関する疑問②,CLINIC NOTE196,2021,11月号,p62-64