「最近犬が水をよく飲む気がするなぁ」
「トイレの回数が増えた気がする…」
「なんとなく元気がなくて、よく寝ている」
などの症状は中高齢以降の犬ではよくあります。
原因として、糖尿病が潜んでいる可能性もあります。
この記事では、
- 犬の糖尿病って治るの?
- どうやって治療するの?
- インスリン注射って難しそう…
など、犬の糖尿病について分かりやすく解説いたします。
目次
犬でよくある病気「糖尿病」とは?
犬の糖尿病とは、読んで字のごとく「糖が尿に出る病気」です。
人でもよくある病気の一つなので、病名を聞いたことがある方は多いと思います。
糖が尿に出ると、
- 食事として得た糖分が尿に出てしまうので、栄養がだだもれ
- 尿に糖が出てしまうと、浸透圧で脱水する
といったことが問題となります。
糖分が尿に出てしまうと脱水してしまうのは、「漬け物」と似ています。
漬け物は、ぬかや塩など濃いものに漬けておくと、野菜から水分が出てしなしなになりますよね。
尿に糖が出ると、浸透圧の関係で、体の水分が尿として出て行ってしまいます。
糖尿病になると、きゅうりやナスと同じ現象が体で起きてしまうのです。
また、体に糖がうまく取り込めないので高血糖にもなっています。
なぜ糖が尿に出るのか?
なぜ糖が尿に出るのかというと、インスリンという血糖値を下げるホルモンの量が足りないからです。
犬の糖尿病の原因はたくさんある
猫の糖尿病は、何かしらの基礎疾患(併発疾患)があって生じることが多いです。
基礎疾患(併発疾患)としてよくあるのは、
- 膵島萎縮(原因不明)
- 慢性膵炎
- クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
- 黄体期糖尿病(未避妊メス)
- 医原性(ステロイドの長期投与)
- 肝腎心疾患
- 抗インスリン抗体
などがあります。
猫は肥満が原因で糖尿病になることがありますが、犬では糖尿病と肥満はさほど関係がありません。
肥満の犬が糖尿病を発症し、基礎疾患がなければ、遺伝的な素因で糖尿病が発症したと考えます。
犬の糖尿病の症状は「多飲多尿」
犬の糖尿病の症状は、よくおしっこをしてよく水を飲む(多飲多尿)がダントツで多く、他にも、
- 食べるけど痩せている
- 食欲不振のときもある
- 被毛が粗剛
- 太っている
- よく寝ている
- なんとなく元気がない
- 口をあけている
- 嘔吐や下痢
などがあります。
犬の多飲多尿の病気はたくさんあるので、参考にしてみてください。▼
犬の糖尿病の怖さは「合併症」
犬の糖尿病が怖い理由は、合併症が生じることにあります。
合併症①腎臓病
「糖尿病で腎臓が悪くなる」というのは、有名かもしれません。
透析を受ける人の多くが、糖尿病が原因とも言われています。
高血糖が続くと、腎臓の糸球体という尿を作る場所が障害を受けて、うまくおしっこが作れなくなります。
合併症②肝リピドーシス(脂肪肝)
糖尿病になると、尿に糖(栄養分)が出て行ってしまうので、体のエネルギー不足を補うために、体の脂肪組織を溶かして栄養を得ようとします。
体の脂肪分は肝臓に運ばれ、
- 糖新生で糖を作ったり
- トリグリセリドとして肝臓に蓄積
されます。
【糖新生とは?】
脂質やたんぱく質(アミノ酸)など、糖質以外のものから糖(グルコース)を作ることです。
糖は一番のエネルギー源になるのですが、
- 糖が不足しているとき
- 肉食動物など糖をとらない動物
などにおいて糖新生は行われ、このシステムにより血糖値が維持できています。
肝臓に運ばれてくる脂肪が多いと、処理しきれずに脂肪肝となってしまいます。
脂肪肝となると、肝臓の機能が非常に低下してしまいます。
合併症③糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病の急性合併症として最も重要なのが、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)です。
糖尿病では糖がうまく利用できないため、脂肪を分解してエネルギーを産生するようになります。
脂肪の分解によってケトン体という物質が生じ、体を酸性に傾けます。
【ケトン体】
糖質制限ダイエットをしたことがある方は聞いたことがあるかもしれません。
ケトン体には、
- アセト酢酸
- 3-ヒドロキシ酪酸
- アセトン
などがあり、いずれも体を酸性に傾けます。
ケトン体は脂肪の分解過程で生じる物質で、通常血液中にはほとんど存在しません。
糖尿病や糖質制限ダイエット、絶食など糖がエネルギー源として利用できないときに、代わりにエネルギー源として使われます。
このケトン体が過剰になると、糖尿病性のケトアシドーシスといって、
- 急激な削痩
- 食欲不振
- 下痢や嘔吐
- 脱水
- 昏睡
などがみられ、命に関わる緊急疾患となります。
合併症④神経症状
人ではしびれや痛みを感じたり、進行すると感覚がなくなる(鈍くなる)ようです。
猫では歩き方が変になったりすることがありますが、犬では顕著ではありません。
合併症⑤白内障
何が原因で白内障になるのかは分かっていないのですが、持続的な高血糖により、
- 眼房水内の浸透圧上昇が生じる
- 過剰な糖とたんぱく質が結びつき、その代謝産物が貯まった
ことによるのでは?と言われています。
犬では糖尿病によって白内障になることがよくあります。
合併症⑥感染症
高血糖のため血液中に糖分がたくさんあり、かつ尿にも糖がでるので、感染症が生じやすく膀胱炎や口内炎になりやすいです。
犬の糖尿病は尿検査で診断する
糖が尿に出てれば、糖尿病と診断できます。
糖尿病の場合、血糖値も高いので血液検査でも分かります。
一般状態が悪かったり、どこかに痛みがあっても血糖値が高いことが多いです。
そのため、血糖値が高いだけで「糖尿病」と診断することはできません。
(※興奮して血糖値が高い場合は、尿に糖が出ることはありません。)
正常の血糖値は、60~160mg/dlなのに対し、糖尿病の犬では200~600mg/dl以上あります。
糖化アルブミンでコントロール良好か判断する
血糖値は日内変動があるのと、興奮したり食事をした後は大いに上がります。
そのため、血糖値を測るだけで糖尿病のコントロールをすることは難しいです。
糖化アルブミンは、過去2週間の平均血糖値を見ることができるので糖尿病のコントロールには有効です。
糖化アルブミンを測定することで、長期間で治療がうまくいっているかの判断ができます。
また、フルクトサミンという項目でも、長期間の平均血糖値を測定できます。
犬の糖尿病はインスリン注射で治療する
犬の糖尿病の治療は、インスリン(血糖値を下げるホルモン)注射で行います。
インスリンには、
- 速効型
- 中間型
- 持続型
の3種類があり、それぞれ効果の持続時間が異なります。
中間型インスリンには、
- ノボリンN
- ヒューマリンN
があり、持続型インスリンには、
- ランタス
- レベミル
- トレシーバ
- プロジンク(猫用のインスリン製剤)
などがあります。
どのインスリンがどのくらいの量で効くのかは個体差があるので、犬によって調整します。
ただ、最初から「自宅でインスリン注射です!」ということは少ないです。
まずは入院したり通院をして、インスリンの種類や量によって血糖値がどのように変動するのかを確認したり、食事の種類や量などを決定して、徐々に家での治療に移行していきます。
インスリンの効きすぎ「低血糖」に注意
インスリンが効きすぎると、低血糖になってしまうことがあります。
低血糖では、
- 意識がなくなる
- ふらつく
- 震える
- よだれや痙攣
などの症状を示すことが多く、ショック状態となることもあります。
食事を食べることができる場合は、なんでもいいので速やかに食べさせましょう。
食事を摂らない場合やぐったりしている場合は、主治医の先生に連絡しましょう。
インスリン注射は一生するの?
猫の場合は、適切に血糖値のコントロールができれば、インスリンを使用しなくなることもあります。
犬の場合は、基本的には生涯注射するようになります。
糖尿病を治療しないと命に関わる事もある
糖尿病を治療しないと、上記で説明した合併症が起こり死に至ることもあります。
犬の糖尿病は食事管理も大切
犬の糖尿病のコントロールには、食事療法も大切です。
- 低炭水化物で高たんぱくの療法食
- 高繊維で低カロリーの療法食
が糖尿病用のフードとして用いられます。
ただ、糖尿病食を食べてくれない犬もいます。
糖尿病の治療のためには、食べることがとても重要です。
なので、その場合は総合栄養食を食べさせて、適切なインスリン治療をしましょう。
とはいっても、糖尿病用の療法食を食べてくれるに越したことはありません。
以下は糖尿病の治療時に使うおすすめフードです。
ロイヤルカナン 糖コントロール
ロイヤルカナンンの糖コントロールは、①低炭水化物で高たんぱくの療法食です。
糖コントロール ドライ▼
ロイヤルカナン 満腹感サポート
ロイヤルカナンの満腹感サポートは、②高繊維で低カロリーの療法食です。
満腹感サポート ドライ▼
満腹感サポート ドライ 小型犬用▼
満腹感サポート 缶詰▼
ヒルズプリスクリプションダイエット w/d
ヒルズプリスクリプションダイエットのw/dは、②高繊維で低カロリーの療法食です。
また、与える量もとても重要で、
- まずは目標体重を設定し、
- 一日の必要カロリーを決定すること
が大事です。
手作り食をあげたいという飼い主様も多いです。
ただ手作り食は、必要エネルギーの計算やエネルギー価を下げて嗜好性を維持することが難しいので、市販の糖尿病フードを与えることをおすすめします。
犬の糖尿病の予後
犬の糖尿病は、基礎疾患(併発疾患)があることが多いです。
(どんな基礎疾患があるかは、糖尿病の原因のところで説明しています。)
これら基礎疾患が適切に治療され、血糖値のコントロールがある程度うまくいけば(日中の血糖値が100~250mg/dL程度)、本来の寿命まで生きることは可能です。
【まとめ】犬の糖尿病は早期発見・早期治療
犬の糖尿病は、多飲多尿がほぼ認められます。
改めて愛犬をよく観察し、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。