猫の中毒と誤食 PR

【猫が人の薬を誤食した】イブプロフェン、アセトアミノフェンは1錠でも危険!

薬を誤食した!イブプロフェン、アセトアミノフェンは1錠でも危険!

「愛猫が人用の風邪薬をなめてしまいました…」

「鎮痛薬を机の上に置いていたら、なくなっていました…」

「人の薬を飲んだのですが、大丈夫ですか?」

など、人用の薬を猫が誤って飲んで(なめて)しまう事故はよくあります。

トラまりも
トラまりも
人用の薬だから、大丈夫かな…って不安になっちゃうよね。

薬の誤食について、先日以下のツイートをしました。▼

犬猫の誤食は、チョコやタマネギだけでなく、「人の薬」も多いです。
中でも、鎮痛剤や解熱剤、睡眠薬などがよくみられ、特に猫や小型犬では1錠の誤食で命に関わる事もあります。
机の上に置いてた、落としてしまったというタイミングでの誤食が多いので、薬は犬猫のいない部屋で飲むのが安全です

■本記事の内容

  • 猫が人用の薬を飲んだ(なめた)ときの症状
  • 誤食してしまったときの対処法
  • 誤食しないようにするために

愛猫が、人用の薬を誤食してしまったときは、あわてず読んでみてください。

猫が人の風邪薬(解熱剤・鎮痛剤)を飲んでしまった!

猫が人の風邪薬(解熱剤・鎮痛剤)を飲んでしまった!

猫にとって危険な薬はたくさんありますが、中でも誤食が多い『イブプロフェン(消炎鎮痛薬)』と『アセトアミノフェン(解熱鎮痛薬)』について解説いたします。

動物の中毒に関する相談を年間約10万件以上受け入れているAPCC(Animal Poison Control Center)という機関が、猫にとっての危険な薬物をまとめています。

APCCは、アメリカの動物虐待防止協会(ASPCA:American Society of Prevention of Cruelty to Animals)という、動物虐待防止のために設立された非営利団体の活動の一つです。

公式サイト:ASPCA

トラまりも
トラまりも
すっごいたくさんあるし、日本語にも翻訳できるから、めっちゃ参考になる!

イブプロフェン

非ステロイド系の抗炎症薬(NSAIDs)の一つで、抗炎症・解熱・鎮痛効果を持つ薬です。

非ステロイド性抗炎症薬とは、ステロイド以外の抗炎症・解熱・鎮痛作用をもつ薬剤の総称です。

人の医療でよく利用され、ドラックストアなどでも簡単に入手ができることから、誤食事故も多いです。

犬や猫におけるイブプロフェンの安全域は非常に狭く、

  • 25~125mg/kgで消化器毒性
  • 175mg/kg以上で腎毒性
  • 400mg/kg以上で中枢神経毒性
  • 600mg/kg以上で死亡リスク

を示すと言われています。

推奨投与量は5mg/kg/日の分割投与。
トラまりも
トラまりも
多量のNSAIDsは、胃や腸などの消化器や腎臓に悪さをする薬なんだ。

また、慢性的な投与では、より少ない量でも症状を示し、

  • 8mg/kg/日の30日間投与で胃潰瘍や腸炎
  • 16mg/kg/日の8週投与で嘔吐や下痢、メレナ、体重減少

を生じたという報告もあります。

例えば、人用の痛み止めの『イブA錠EX』にはイブプロフェンが200mg(1回量2錠中)含まれています。

猫においては、犬の約2倍の感受性があるとされており、1錠飲んだだけでも危険性があります。

アセトアミノフェン

人用の風邪薬や解熱鎮痛剤としてよく処方される薬です。

薬局でも購入可能で、バファリンなど多くの商品で使われています。

解熱・鎮痛効果などNSAIDsと似たような効果がありますが、抗炎症効果は極めて弱いタイプの薬です。

多量のアセトアミノフェンは、肝障害メトヘモグロビン血症を引き起こします。

メトヘモグロビン血症とは、赤血球中のヘモグロビンが変化して、全身に十分な酸素が届けられなくなった状態です。

猫では解毒機構の一つであるグルクロン酸抱合能を欠くため、犬よりも約10倍の感受性があるため、禁忌の薬となっています。

アセトアミノフェンの中毒量は、

  • 犬で100mg/kg以上(150~200mg/kgという報告も)
  • 猫で50~60mg/kg以上(10mg/kgという報告も)

と推定されています。

推奨投与量は、犬で10mg/kg BID。猫は禁忌。

バファリンプレミアムには、アセトアミノフェンが130mg(1回量2錠中)含まれており、体の小さい犬や猫においては1錠でも命の危険性があります。

どんな症状がいつごろ出るの?

どんな症状がいつごろ出るの?

症状は、薬の誤食後1~4時間程度で現れ、

  • 嘔吐や下痢
  • 食欲不振
  • 大量のよだれ
  • けいれん
  • ぐったり
  • 腹痛

などが見られることが多いです。

イブプロフェンの場合には、

  • 吐血やメレナ(黒色便)
  • 腎障害;尿が作られない、尿毒症
  • 中枢神経障害;けいれん、運動失調

などを示すこともあります。

 

アセトアミノフェンは、肝臓が障害されるため、黄疸となることもあります。

また、メトヘモグロビン血症を引き起こし、

  • チアノーゼ(酸欠状態)
  • 呼吸困難
  • 顔面や肉球の浮腫
  • 血尿(血色素尿)
  • 貧血

となる場合もあります。

人の薬を誤食した場合には、どうすればいいの?

人の薬を誤食した場合には、どうすればいいの?

誤食に気づいた時点で、動物病院に連絡をしてください。

摂取から数時間以内であれば、催吐処置や胃洗浄が可能です。

また、活性炭(医療用の炭;毒素を吸着させる)の投与も有効で、輸液療法も併用する場合があります。

イブプロフェンの誤食により胃腸障害が認められる場合には、

  • 制酸剤:ファモチジンやシメチジンなど
  • 粘膜保護剤:スクラルファートなど
  • 抗潰瘍薬:ミソプロストールなど
  • 制吐剤:メトクロプラミドやマロピタントなど

といった薬剤の投与も行います。

中枢神経障害があるときには、発作のコントロールも行う必要があります。

アセトアミノフェン中毒の場合には、

  • N-アセチルシステイン(アミノ酸の一つで、アセトアミノフェン中毒に対する解毒剤)
  • アスコルビン酸(ビタミンCで、メトヘモグロビンを還元)
  • メチレンブルー(酸化したヘモグロビンを元に戻す)

などの投与を行います。

メトヘモグロビン血症の場合には、すみやかに酸素吸入を行う必要があります。

予後は摂取量や治療の有無によって異なりますが、いずれにしても早期に対処することが重要です。

愛猫が人の薬を誤食しないために

愛猫が人の薬を誤食しないために

『薬が落っこちてしまい、そのままペロッと』

ということもあるので、愛猫がいないところで薬の出し入れをすることが重要です。

飲む直前に取り出し、普段は入れない部屋や手の届かない場所にしまっておくようにしましょう。

また、「おばあちゃんやおじちゃんにあげる薬を、机の上において置いたらなくなってた!」ということもよくあります。

机には置かず、手渡しであげるようにするといいですね。

【まとめ】猫が人の風邪薬を誤食!イブプロフェン・アセトアミノフェンなど鎮痛解熱剤は危険!

猫が人の風邪薬や解熱剤を誤食してしまうことはよくあります。

成分の一つであるイブプロフェンやアセトアミノフェンは、大量摂取で胃腸や肝臓・腎臓に障害を与え、亡くなってしまうこともあります。

ペットの誤食は『届かない所にものをしまう』ことで防ぐことができます。

いま一度、確認してみましょう!

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【参考資料】

  • 猫の治療ガイド2020,辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,EDWARD Press,2020,p116-117
  • BUFFERIN 公式ホームページ
  • EVE 公式ホームページ
  • 誤食・中毒の緊急対応に関する疑問②,CLNIC NOTE 196,2021,11月号,p66-70
  • Finco DC, Duncan JR, Schall WD, Prasse KW.,Acetaminophen toxicosis in the cat.,J Am Vet Med Assoc. 1975 Mar 1;166(5):469-72.
  • J O Anvik,Acetaminophen toxicosis in a cat,Can Vet J.1984 Dec;25(12):445-7.
  • Eric Dunayer, MS, VMD,Ibuprofen Toxicosis in Dogs, Cats, and Ferrets,Vet Med 99[7]:580-586 Jul’04 Toxicology Brief 13 Refs
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  • 桃井康行,小動物の治療薬,文永堂出版,2020