新型コロナウイルス感染症により、緊急事態宣言が出されることになりました。
不要不急の外出ができない中、
「まだ、フィラリアの予防薬を飲ませていない!」
「インターネットでフィラリア薬を注文して、勝手にあげてもいいの?」
など、飼い主様におかれましてはフィラリア症予防に関してどうすればよいのか悩まれていることと思われます。
では、この新型コロナウイルス感染症が落ち着くまで、
- 犬のフィラリア予防はしなくても大丈夫なのか
- 自分で買って飲ませていいのか?
- 去年の残りをあげていいのか?
などを、当サイト管理人獣医師トラまりもが分かりやすく解説していきます。
目次
犬のフィラリア予防はできなくても大丈夫?
結論から言うと、4月現在まだ大丈夫です。
6月中旬までに行うといいでしょう。
フィラリア予防薬は蚊が出てきてから、2か月以内に飲ませればOK
フィラリア予防薬は、蚊が出現してから2か月以内に飲ませれば大丈夫です。
住んでいる場所にもよりますが、4月中旬の関東圏はまだ寒いですので、おそらく蚊が大量にいるというのは考えにくいです。
そのため今年に関しては、6月中旬くらいまでに1回目のフィラリア薬を飲ませればいいと思われます。
どうして蚊が出現してから、2か月以内に飲めばいいの?
フィラリアの予防薬の成分は、主にイベルメクチンというものです。
他にミルベマイシンという薬も多く使われます。
同じようなタイプの薬なので、今回はイベルメクチンについて説明いたします。
イベルメクチンは、「mf、L4、L5」というフィラリアを倒す薬です。
「え、何のこっちゃ!」と思われますよね。
より分かりやすく知りたい方は、まりも動物病院のブログを参考にどうぞ▼
「なぜフィラリア予防が6月中旬からで大丈夫なのか」を解説します!
フィラリアのライフサイクル
フィラリアは日本語名を犬糸状虫という、主に犬に寄生する寄生虫です。
寄生虫は、
- 原虫
- 吸虫
- 条虫
- 線虫
などといった分類に分けられるのですが、犬糸状虫は線虫という分類に入ります。
線虫には、
mf(ミクロフィラリア;フィラリアの赤ちゃん)→L1→L2→L3(感染する能力を持つフィラリア)→L4→L5→成熟してmf産生→…
というライフサイクルがあります。
これは人でいうと、
赤ちゃん→幼稚園生→小学生→中学生→高校生→社会人→結婚して子供産む→…
みたいなライフサイクルと同じです。
フィラリアは主に、「蚊」と「犬」をその住居とします。
蚊に寄生したmf(ミクロフィラリア)は、蚊の体中でL3まで成長します。
↓
その蚊が犬を刺すと、L3が血液を介して犬の体内に入ります。
↓
犬の体内に入ったL3は、しばらく刺された部位の近く(皮膚の下や筋肉など)で成長します。
(この間L4→L5となる)
この期間は大体2か月くらいあると言われています。
↓
成長すると血液に乗って、心臓(肺動脈や右心系)まで移動をし、そこで住み始めます。
↓
そして、心臓でmf(ミクロフィラリア)を産生するようになります。
(大体感染してから6か月後くらいです。)
↓
その犬を蚊が吸うと、mfが蚊に移動する…という流れになります。
人でいうと、生まれてから高校生までは、実家(=蚊の体内)に住んでいます。
そこでスクスク、ぬくぬく成長します。
そのあと、引っ越しをして、一人暮らし(=犬の体内)をする感じです。
イベルメクチンは、「mf、L4、L5」というフィラリアを倒す薬
フィラリアの薬「イベルメクチン」は、すべてのフィラリアを倒すわけではなく、特定の時期のフィラリアを倒します。
先程も言いましたが、犬の体内に入ったL3は、皮膚の下などで成長をして、L4、L5となります。
この期間が、2か月くらいあるので、その間に倒しちゃおう!という薬です。
また、イベルメクチンはmf(フィラリアの赤ちゃん)も倒すと言いました。
あまりにもmfの量が多いと、それを倒した場合、
「アナフィラキシーショック」というアレルギー症状が起きることがあります。
これがとても危険なので、大人のフィラリアが感染していないかを、血液検査で調べてから、薬を処方するようにしているのです。
フィラリアって感染すると、どんな症状が出るの?
最近では、多くの動物病院がフィラリアの検査してから薬を処方するので、症状が出て発見されるということは滅多にありません。
ただ、薬を飲んでない子や、野犬などは症状が出て発見されることもあります。
- 咳が出る
- 呼吸困難
- 運動不耐性
- 貧血
- 血色素尿
などが生じて、発見されることもあります。
ほとんどが病状は慢性的に進行します。
少量の寄生では、肺動脈及び右心系に寄生するのみで、この場合は軽い咳、もしくは無症状であることが多いです。
ただ、たくさん感染すると、大静脈(全身循環)の方まで広がり、右心不全となり死に至ることもあります。
フィラリア予防の必要性について書いた記事もあるので、読んでみてください▼
フィラリアに感染していた場合はどうするの?
予防薬よりもずっと多い量のイベルメクチンを飲ませて倒すことができます。
心臓にいる大人のフィラリアを手術で取ることもあります。
フィラリアって犬だけがなるの?
「犬糸状虫」というくらいなので、基本的には犬の病気です。
ただ、猫や場合によっては人もかかることはあります。
最近では、猫のフィラリア予防に力を入れている動物病院もあります。
検査しなくても飲ませられる薬もあるって聞いたけど?
確かに、検査をしなくても飲める予防薬はあります。
モキシデクチンというお薬で、「L4とL5」を倒す薬です。
薬の効力が弱いので、mfを倒しにくいことが特徴の薬です。
「それなら、mfも倒してしまうイベルメクチンより、こっちのほうがいいんじゃないの?」
と思われた方は、鋭いです!!
しかし、少量のmfならば倒してしまったほうがいいのです。
万が一、飲み損じなどで、うまくL4やL5が倒せなかった場合、フィラアリアは大人になってしまいます。
そうなると、体中にmfがうじゃうじゃになってしまいます!
モキシデクチンが流行しないのは、このmfを倒しにくいという理由からです。
犬にフィラリアがいないか、検査はどうやってやるの?
大人のフィラリアがいないか確認する検査は、
- mf(フィラリアの赤ちゃん)がいないかを顕微鏡で見る
- 大人のフィラリアの抗原をキットで判断する
という方法です。
ともに血液検査ですぐに分かります。
ネットで買ったフィラリアの薬を飲ませてもいいの?
このように、検査をしてからフィラリア薬は処方されます。
なので、検査なしに飼い主様の判断で薬を飲ませるのは「危険」と言えます!
また、ネットで売っている薬は効果が弱いものもあります。
きちんと動物病院で処方してもらったものを飲ませましょう。
【フィラリアの予防薬】
フィラリア予防薬は、薬事法で定められた要指示医薬品です。
また獣医師法では、要診療医薬品に規定されています。
そのため、獣医師の処方箋や指示によって使用することが義務付けられています。
去年のフィラリア薬が残っているけど、飲ませてもいい?
こちらも同様で、検査をしていれば、残っている薬を飲ませてもいいと思われます。
ただ、薬の有効期限もあるので、処方してくれた獣医さんに確認してみましょう。
フィラリア薬は毎月1回飲ませなくても、大丈夫ってこと?
理論的には、蚊に刺されて2か月以内に薬を飲めばいいのだが、実際いつ蚊が出てくるのかは、わかりませんよね。
また、飲み忘れや、実は落ちていて飲んでなかった!などがよくあります。
そのため、毎月1回の予防が安全であると言えます。
今は非常事態宣言で外出自粛と言われています。
6月中旬くらいまでに予防を始めれば大丈夫だと思われますが、通常は4、5月くらいから予防をするようにしましょうね!
【まとめ】フィラリアの薬は焦らなくても大丈夫!
ペットを飼っていると、「春は予防シーズン」というイメージがあるかと思われます。
本来ならば、予防関係は春に行うものですが、
「今は外出自粛」という考えのもと、行動したほうがいいと思われます。