「犬が下痢止め薬を飲んでいるのだけど、治らないです…」
「家に人用のビオフェルミンあるのだけど、飲ませていいの?」
「市販の下痢止め薬ってあげていいのかな?」
など、犬の下痢止め薬について、何を飲ませればいいのか悩まれている飼い主様は多くいらっしゃいます。
この記事では、
- 下痢止め薬にはどんな薬があるの?
- ビオフェルミンってあげてもいいの?
- 市販の下痢止め薬をあげてもいいの?
など、犬の下痢止め薬について使用法や注意点を分かりやすく解説し、合わせて下痢を治すためのおすすめのフードもご紹介いたします。
目次
下痢の原因によって、使う下痢止め薬は異なる
当然ですが、何が原因で下痢をしているのかによって使用する下痢止め薬は異なります。
犬の下痢の原因は、
- フードの変更
- 消化器の機能不全(胃腸の消化吸収不全、膵機能不全など)
- 食物アレルギー
- 感染症
- 中毒
- 腫瘍
- ホルモンの異常(甲状腺、副腎など)
- 過敏性腸炎
…などとたくさんあります。
よく使う犬の下痢止め薬
犬の下痢には、
- 単純な一過性の下痢(ストレス、季節の変わり目など)
- 消化器に何かしらの異常があって生じる下痢
- 消化器以外に何かしらの異常があって生じる下痢
の3パターンあります。
今回は、①単純な一過性の下痢のときに出される下痢止め薬を解説します。
整腸剤:ずばっと効くわけではないが、害はない
よく出される薬の代表といえば、ビオフェルミンなどの整腸剤です。
ビオフェルミンなど腸で働く微生物のことを、プロバイオティクス(善玉菌製剤)と言います。
プロバイオティクスには、
- 乳酸菌
- 酪酸菌
- ビフィズス菌
- 酵母菌
- 麹菌
などがあります。
整腸剤と一緒に用いるとよいものとして、プレバイオティクスがあります。
プレバイオティクスは、有用菌だけを増やす(悪玉菌の増殖を抑制する)物質のことで、
- オリゴ糖
- 食物繊維
などがあります。
整腸剤は、飲んでいて特に害がなく有用なことが多いので、下痢や軟便の時は飲んでいいと思われます。
家にある人用のビオフェルミンも、特に問題なく与えていいと思われます。
収斂剤(しゅうれんざい):あまり効かないことも…
腸粘膜の表面で分泌物などのたんぱく質と結合して被膜を形成し、腸粘膜の保護をする薬です。
タンニン酸、硫酸アルミニウムなどがあり、商品名として『ディアバスター』が有名です。
よく出される薬ですが、効力的には弱いイメージがあります。
防腐剤:あまり効かないことも…
腸のぜん動運動を緩めたり、腸内の有害細菌の増殖を抑える作用があります。
ベルベリンなどがあります。
これも効力的には弱いイメージです。
消化酵素剤:消化不良には効く!
エクセラーゼ、ベリチームなどがあり、複数の消化酵素を補うことができます。
プロスタグランジン合成阻害剤:場合によるが、効果抜群!
この薬もよく使われるタイプの薬で、効力は抜群です。
5-アミノサリチル酸製剤(COX阻害)として、サラゾスルファピリジンという成分の薬がよく使われます。
粘液便をしているときは、大腸炎の可能性もあります。
大腸炎って何?って方はこちらも参考にしてください。▼
ステロイド剤もこの分類に入りますが、内視鏡をして免疫異常による下痢と診断されたときに主に用います。(下痢の初診で出されることはほぼないです。)
抗生物質:場合によるが、ズバッと効く!
クロストリジウムやカンピロバクターなど特定の腸内細菌を倒すときに使用します。
有用菌も殺してしまうので、腸内細菌のさらなるバランスの変化に注意が必要です。
「抗生物質を飲ませたら、吐きました…」
「抗生物質を飲ませたら、もっと下痢になりました…」
というのはよくあり、その場合は薬を中止し変更する必要があります。
ただ、ずばっと効くことも多いので、抗生物質はよく出される薬の一つです。
運動調整剤:たまに出されるけど…
過度の消化管のけいれんを抑える薬です。
スコポラミン、ロペラミドなどがあり、ぜん動運動を抑えることで、腹痛の緩和ができます。
どうしても下痢が治らないときはこんな手だってある
どうしても下痢が治らないときは、炭やバリウムなどの『吸着剤』を用いることもあります。
薬用炭は有害物質や細菌の吸着をし、便として出し腸への刺激を低減させます。
バリウムは、消化管造影検査でよく聞くと思いますが、それです。
「おなかの中で固まってしまうから、検査の後は下剤を飲んでください」というのがお決まりですが、逆にそれを利用しているというわけです。
ただ、結構作用が強力なので、嘔吐やおなかの痛みを引き起こすことがあります。
市販の犬用下痢止め薬はあまりおすすめできない
犬用の下痢止め薬は、インターネットやホームセンターなどで簡単に購入することができます。
でも、獣医師としては市販の下痢止め薬はあまりおすすめできません。
なぜかというと、下痢には止めていい下痢と止めてはいけない下痢があって、その区別を飼い主様がすることはできないからです。
なので、動物病院で糞便検査をしてもらって適切な薬を出してもらうようにしましょう。
そもそも下痢止め薬を1回飲んだだけで治ることはない
まず、どんな薬においてもですが、1回もしくは1日飲んだだけでよくなるわけではないです。
処方された日数分をきちんと飲んでから、判断したほうがいいです。
ただ、実際は2、3日飲むと回復の兆しが見えることは多く、
逆に言うと「2、3日飲んでいても変わりがない」もしくは「どんどん悪くなっていく」場合は、
- 薬の種類が合っていない
- 薬の量が合っていない
可能性もあるので、主治医の先生にご確認ください。
犬の下痢は食事で治ることもある
単純な一過性の下痢においては、
- 消化器に配慮したフードを混ぜる(消化器サポート、w/dなど)
- 高繊維の野菜(ジャガイモやサツマイモなど)を食事に混ぜる
ことでよくなることは多いです。
下痢の時に食事を食べさせるかどうかですか、
基本的には、吐いていなければ食べさせていいと思われます。
いつもより少量にしたり、ふやかしてあげるとよりいいですね。
【まとめ】犬の下痢止め薬について
このように犬の下痢止め薬は、単純な一過性の下痢だとしてもたくさんの種類があります。
1回の診察で出される薬でよくなることもあれば、変わらないこともあります。
「薬飲ませたけど、よくならなかった…病院変えようかな…」
と思わず、きちんと再診に伺ってくださいね。
「1回目の薬が効かなかった」ということが、次の診療をより確実なものにできるのです!
また市販の下痢止め薬は、使用する状況を間違えると害にもなるので、あまりおすすめしません。
何か困ったことがあったら、主治医さんに確認してみてくださいね!