「猫白血病ってうつる病気ですか?」
「多頭飼いなのですが、どうやって飼育すればいいですか?」
「発症したら、どれくらいで亡くなってしまうのですか?」
など、『猫の白血病』について、疑問や不安がある飼い主様は多いです。
■本記事の内容
- 猫の白血病とは?
- 多頭飼いでの飼育方法
- 余命や感染予防・発症予防
猫の白血病は、発症しないこともある病気です。
愛猫が白血病(疑い)の場合には、あせらずに読んでみてください。
目次
猫の白血病はうつる病気~原因とは?
猫の白血病は、猫白血病ウイルス(Feline leukemia virus;FeLV)というウイルスによる感染症です。
人の白血病は『血液のがん(原因のほとんどが不明)』なので、猫の白血病とはちょっと違います。
猫白血病ウイルスは、感染した猫の、
- 唾液
- 鼻汁や涙
- 尿や糞便
- 血液
- 乳汁や胎盤
から排せつされます。
主な感染経路としては、感染した猫との、
- グルーミング(母猫が子猫をなめた場合も)
- 咬傷、けんか
- 食器の共有
- 母親から直接
などで、口や鼻を介して感染します。
子猫が感染しやすいですが、年齢とともに病気への抵抗性が強くなっていき、成猫では感染しても自然に治ってしまうこともあります。
また、猫白血病ウイルスは環境中では弱いため、すぐに感染力を失います。
空気感染もほぼありません。
しかし、ペットシーツなどのような湿った場所では、やや長く感染力を持つ傾向にあります。
エイズとの違い
猫白血病は、『猫エイズ』という別の病気とよく比較されることがあります。
猫エイズとは、猫免疫不全ウイルス感染症という病気のことで、ウイルスによって免疫力が低下してしまう病気です。
後日、別記事で解説いたします。
人や犬など他の動物にもうつるの?
現時点では、猫白血病ウイルスは『猫固有のウイルス』であり、ネコ科以外の他の動物には感染しないと考えられています。
潜伏期間や発症したときの症状とは?~症状はすぐに出ない
感染の初期には、
- 発熱
- 元気がなくなる
- リンパ節が腫れる
- 白血球や血小板が減少する
- 下痢が続く
- 貧血
といった他の病気でもみられるような症状が出ます。
ただし、これらの症状は、感染後すぐに出るのではなく、2~4週間後と時間差で出ます。
そして、数週間、場合によっては数か月続きます。
このあと、猫の年齢や状態によって、
- 完全回復(ウイルスの排除)
- 潜伏感染
- 持続感染
のいずれかの経過をたどります。
①完全回復
抵抗力のある猫では、感染したとしても、体からウイルスの排除をして、完全回復することもあります。
②潜伏感染(退行性感染)
ウイルスが増殖こそしないものの、完全に排除できていない状態です。
そのため、潜伏感染の場合、普段は症状を示さないですが、ストレスや免疫抑制剤などの免疫力が落ちたときに再び活性化し、持続感染の状態へ移行します。
潜伏感染の場合は、症状を示すことなく寿命を迎える子もいます。
③持続感染(進行性感染)
感染した猫のうち、約30%が持続感染をすると言われています。
持続感染をした場合、数か月~数年後に発症し、診断後の生存中央値は2.4年と報告されています。
様々な病気(急性白血病やリンパ腫、歯肉口内炎、貧血や感染症、免疫不全症など)を発症し、長期の予後は期待できません。
子猫や感染後に重篤な症状を示した場合には、持続感染をしやすいと言われています。
診断方法~陽性から陰性?陰転について
動物病院で、猫白血病ウイルスの抗原を検出する簡易キット(血液検査)にて検査が可能です。
より確実な検査方法としては、外注検査(外の検査センターに依頼するため時間がかかる)によるPCR検査や免疫蛍光染色(IFA)といった血液検査があります。
簡易キットにて陽性の場合には、これら外注検査に出すか、1~2か月後に簡易キットにて再検査をするようになります。
ただし、一度の検査で確実に陰性・陽性ということはできません。
そのため、確実なのは、一度の検査で診断をするのではなく、時間を空けての再検査やPCR検査、IFA検査を併用するようになります。
一度の検査で陰性と言えない理由
陰性の場合には、感染していない可能性が高いです。
ただし、上でもお伝えした通り、感染してもすぐに血液中にウイルスが出てくるわけではありません。
そのため、感染が疑われたあとすぐに検査をした場合には、陰性という結果になります。
陰性であったとしても、確実に陰性というためには、1か月以上経ってから再検査をする必要があります。
一度の検査で陽性と言えない理由
陽性であった場合は、検査時点では陽性と言うことになります。
ただし、成猫の場合は、陽性であったとしても、症状を示すことなく回復をする(治癒する)ことが多いです。
その場合、ウイルス検査で陽性と出ていたとしても、数週間後の再検査で陰性(陰転)となることがあります。
感染はしたものの、ウイルスを排除し、一過性に終わったということです。
また、感染はし続けているものの、潜伏感染に移行した可能性もあります。
数か月後の再検査でも陽性の場合には、持続感染をしていると言うことになります。
猫白血病は治る病気なの?治療法とは?
猫白血病は治ることもありますが、持続感染の場合には治らない病気です。
また、ウイルスを倒すような根本的な治療はできなく、対症療法で治療をするようになります。
- 抗生物質
- インターフェロン
- 抗がん剤
- 輸血
猫白血病の寿命・余命~発症してから
全ての猫が発症するわけではなく、感染したとしても、年齢や健康状態によっては、体からウイルスを排除することは可能です。
その場合には、寿命まで生きることが多いです。
持続感染で発症した場合には、数か月から数年で亡くなってしまいます。
猫白血病の感染予防
残念ながら、母猫からの感染は防ぐことはできません。
(ただし、多くの子猫は流産や死産、発育不良などによって死亡してしまいます。)
母猫が感染していた場合には、生ませないようにして対応するようにしましょう。
完全に感染を予防するためには、感染猫に触れさせないことです。
そのため、完全室内飼いにすることが重要です。
万が一の脱走に備えて、ワクチン接種をしておくことも予防の一つとなります。
4種もしくは5種混合ワクチンで予防が可能で、一般的に行う3種の混合ワクチンでは予防はできません。
ただ、副作用として、注射部位が硬くしこりになってしまう『注射部位肉腫』が生じる場合があります。
発生率は、1万回のワクチン接種につき1~4例ほどですが、他のワクチンでも同様の危険性はあるため、猫白血病ウイルスワクチンだけが特に危険であるということではないです。
また、全ての猫でワクチン接種が必要か?というと、そういうわけでもないです。
ワクチン接種が必要な場合は、一例として、
- (子猫)
- 外に出る猫
- 外に出る猫と接触する猫
- 感染が不明の猫と接触する猫
があります。
完全室内飼いで感染猫と接する機会がなければ、接種の必要はないです。
ワクチン接種前には、まだ白血病にかかっていないことを確かめる必要があります。
また、感染後にワクチン接種をしても意味はないです。
猫白血病の場合の飼い方~発症予防
愛猫の猫白血病ウイルスの感染が確認されたら、
- 完全室内飼い
- ストレスがかからないようにする
- 栄養バランスの取れた食事を与える
- リラックスできる環境
- 定期的な健康診断(少なくとも半年に一回)と一般的なワクチン接種
- 日頃から食欲や体の状態を触ってチェック
- 多頭飼育なら隔離
など、猫が穏やかに過ごせるための対策をしましょう。
完全室内飼いにすることは重要で、そのほかの病原体に曝露されるリスクの低下や他の猫にうつすことを予防できます。
発症してしまった場合には、関連疾患の治療も大切で、すなわち、
- 歯肉口内炎
- 貧血
- 細菌感染症
- リンパ腫
といった病気のケアを行うようになります。
また、飼い主様も手洗いや一般的な消毒薬での消毒など、清潔を心がけるようにしましょう。
【まとめ】猫白血病ウイルス感染症(FeLV)の原因や症状、寿命などを解説!
猫の白血病は、猫同士でうつりあうウイルスによる病気です。
発症しないことも多いですが、症状が出ると数年で亡くなってしまうこともあります。
感染予防が重要で、完全室内飼いをすることで危険性がグンと減ります。
愛猫にリラックスできる心地よい空間を提供し、感染・発症予防につとめましょう!
【参考資料】
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,猫の治療ガイド,EDUWARD Press,2021,p790-792