「愛猫がくしゃみをしています…」
「涙や目やにが出ていますが、大丈夫ですか?」
「猫も風邪をひくのですか?」
など、猫の風邪に関して、疑問や不安がある飼い主様は多くいらっしゃいます。
猫の風邪について、先日以下のツイートをしました。
「動物も風邪をひきますか?」とよく聞かれますが、もちろん風邪をひきます!
冬は特に多く、ワクチンを打っていてもかかります。
人と同じようにくしゃみをしたり、下痢をしたり…。
「なんか最近元気がないな…」というのも、実は風邪をひいていた!なんてことも。
暖かくしてゆっくり休みましょう😊— トラまりも@まりも動物病院 (@toramarimo_blog) November 18, 2021
「動物も風邪をひきますか?」とよく聞かれますが、もちろん風邪をひきます!
冬は特に多く、ワクチンを打っていてもかかります。
人と同じようにくしゃみをしたり、下痢をしたり…。
「なんか最近元気がないな…」というのも、実は風邪をひいていた!なんてことも。
暖かくしてゆっくり休みましょう😊
■本記事の内容
- 猫の風邪の原因とは?
- 症状や治療法とは?
- 完全室内飼いも風邪をひくのか?
愛猫がくしゃみをしたり鼻水を垂らしていたら、風邪の可能性があります。
治療法や対策もお伝えしているので、ぜひ読んでみてください。
目次
猫風邪とは?原因はウイルス感染が多い
猫風邪とは、読んで字のごとく、猫の風邪です。
猫の風邪は、正式には、『猫上部気道感染症』といわれます。
猫も人と同じように風邪をひくことがあり、原因のほとんどはウイルスによるものです。
これは人でも同じようです。▼
風邪(かぜ)とは、上気道(鼻やのど)が微生物に感染することによって起こります。原因微生物の約90% はウイルスが占めており、残りの約10%は細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどウイルス以外による感染です。
猫の風邪の主な原因微生物としては、
- 猫ヘルペスウイルスⅠ型(FHV-1);猫ウイルス性鼻気管炎という
- 猫カリシウイルス(FCV)
- 各種細菌
- クラミジア
などがあります。
感染経路は、経口・経鼻・経結膜感染で、感染猫のくしゃみや唾液を通して感染します。
母猫からの移行抗体がなくなる子猫の時期(2~3か月齢)に多く発症する傾向にあります。
また、季節の変わり目は体調を崩しやすく、風邪をひきやすいです。
その原因は『日較差(にちかくさ)』という一日の最高気温と最低気温の差にあります。▼
症状はくしゃみや鼻水、涙や食欲不振など
症状は人の風邪と似ており、
- くしゃみや鼻水、鼻づまり
- 涙や目やに
- よだれ
- 発熱
- 角膜・結膜炎
- 食欲がない
- 元気がない
といったことがあります。
くしゃみや鼻水が続くと、鼻の粘膜が切れて鼻血が出たり、固まった鼻水が鼻腔をふさいで呼吸困難となってしまうこともあります。
なかには下痢や嘔吐をしたり、口内炎や跛行(猫カリシウイルス)をし、重症例では肺炎をともなうこともあります。
こういった症状は、感染してからすぐに出るのではなく、2~10日間(1~2週間程度)の潜伏期を経て発症します。
猫風邪の検査法~基礎疾患のチェックも重要
猫風邪を診断するためには、症状とあわせて、
- 血液検査
- 鼻腔や口腔、結膜のスワブ検査(体液を綿棒で取って、どんな微生物がいるかみる検査)
- レントゲン検査
などを行い、診断していきます。
また、場合によっては、何かしらの基礎疾患がないかのチェックも必要です。
ただ、いろいろ検査をしても、病原微生物を特定することは困難な場合も多いです。
なぜなら、ワクチンを打っている場合には、現時点で感染をしていなくても、血液検査で抗体が陽性となるため、また、現時点で感染をしていたとしても、抗体の影響でウイルスが出てこない可能性もあるためです。
ウイルスが検出されたとしても、それが本当に原因なのか?が分からないことも多いです。
猫風邪の治療法や治療期間
ウイルスは直接倒すことが難しいので、基本的には対症療法となります。
- 抗生剤(細菌の二次感染予防のため)
- 消炎剤
- 抗生剤・消炎剤の点眼液・点鼻液
- 輸液
- 強制給餌
- 栄養チューブでの給餌
- ネブライザー
場合によっては、抗ウイルス薬を使用することもあります。
治療期間は症例によって異なりますが、治りが速い子だと数日、重症の場合には数週間程度かかることもあり、そのまま慢性化してしまうこともあります。
人間用の薬は絶対だめ!
「風邪かな?」と思って、愛猫に人間用の薬をあげる人がいますが、絶対だめです!!!
猫と人とでは、体内における薬の分解システムが全く異なるので、人では普通に使用する薬が、猫では命を奪ってしまうことがあるのです。
詳しくは、こちらの記事をご参照ください。▼
猫風邪にならないためには?【猫風邪の予防法】
猫風邪の予防のために、ワクチン接種は有用です。
子猫のうちは2,3回、その後は1年に1回打つようになります。▼
ただし、ワクチン接種は、猫風邪にならないわけではなく、かかっても軽症ですむためのものです。
また、猫カリシウイルスは、抗原性の異なる(型が違う)株が存在するため、ワクチンの効果には注意をする必要があります。
猫風邪にならないようにするためには、常日頃から健康に気をつけることが最も大切です。
特に、子猫やシニア猫は体が弱いので、より注意が必要です。
そのためには、良質な食事と、適度な運動、十分な睡眠など、ストレスフリーな生活が重要です。
また、何かしらの基礎疾患があると重症化しやすいので、定期的な健康診断もおすすめです。
自宅にて定期的に体温を測るのも、異常を素早く知る方法の一つです。▼
室内飼いなのに、なぜ風邪をひくの?
「完全室内飼いですが、なぜ風邪をひくのですか?」
というのはよくうがかいます。
どこかからウイルスや細菌が入ってこなければ、猫は風邪をひかないですもんね…
そのどこかとは、ずばり『人間』です。
人の服や靴などにくっついて入ってくることがあるのです。
また、ペットホテルやトリミングなどを利用した際に、他の猫からうつってしまうこともあります。
猫ヘルペスウイルスなどは、『潜伏感染』といい、子猫のときからずっと体にいすわっており、体調の悪化に伴って発症するものもあります。
子猫の時期に重度の症状を引き起こした場合には、より健康管理が重要となります。
多頭飼いの場合はどうすればいい?
多頭飼いや猫どうしの接触頻度が高い状況の場合には、うつりあってしまうこともあります。
そのため、風邪がよくなるまでは別飼いするようにしましょう。
また、猫ヘルペスウイルスは、環境中にて長く生きることはできませんが、猫カリシウイルスは1か月以上感染力を持っています。
そのため、環境衛生も大事で、次亜塩素酸などで消毒するようにするといいですね。
現時点で、症状が見れれなくても、ストレスによりウイルスを放出するようになることがあります。
1匹1匹がストレスフリーで生活できるように心がけましょう。
【まとめ】猫も風邪をひきます!原因や症状、治療や対策などを獣医師が解説!
猫も人と同じように風邪をひきます。
特に子猫やシニア猫、なにかしらの病気がある子はかかりやすく、特に季節の変わり目には注意が必要です。
くしゃみや鼻水などの症状が見られたり、いつもと何となく違うな…という場合には、なるべく早めに受診をしましょう!
【参考資料】
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,猫の治療ガイド2020,EDWARD Press,2020