「発作が起きてるのですが、家でできることないですか?」
「呼吸が苦しそうです、何か自宅でできないですか?」
「おなかが痛くて具合が悪そうです」
などペットに変調が起きて、家で何かできることはないかとご相談される飼い主様は非常に多いです。
実際の治療は、薬や設備がない家では難しいことが多いです。
ただ、「手当て」なら今すぐにでもできますし、実際に効果があります。
この記事では、
- 手当ての効果
- 手当ての具体的なやり方
などを獣医療に携わって20年のトラまりもが、実例を交えて解説していきます。
手当ての効果は2つある
手当てにはいろんな意味がありますが、そのうちの一つ「手当て療法」は、
手のひらや指先を患部に当てたりかざしたりするだけで体の不調を治そうとする方法です。
この「手当て療法」の効果は2つあります。
- 1/f(エフぶんのいち)ゆらぎの効果
- オキシトシンの分泌
それぞれ解説していきます。
手当ての効果①1/fゆらぎの効果
1/fゆらぎとは、規則的なものと不規則的なものが調和した状態のことです。
規則的なものと不規則的なものの調和により、心地よく快適な気分となります。
具体例として、
- 小鳥の鳴き声
- 川の流れの音
- ろうそくの炎
- 電車の揺れ
なども全部1/fゆらぎが関係しています。
手当てにおいては、なでられた人の皮膚には1/fゆらぎの周波数をもつ振動が発生することが分かっています。
二者の片方が相手の手の平を「撫でる」場合に、撫でられた人の皮膚に生じる振動について肘の部分で測定すると、撫でられた人の皮膚には「1/fゆらぎ」の周波数を持つ振動が発生することが分かりました。
撫でられるという行為そのものにリラックス効果があるということですね。
手当ての効果②オキシトシンの分泌
体に触れることによってオキシトシンというホルモンが出ることが分かっています。
オキシトシンは、
- 子宮の収縮をする
- 射乳刺激をする
など女性ホルモンとしての働きが有名ですが、中枢神経での神経伝達物質としての作用もあります。
この作用により、副交感神経を優位にするのでリラックス効果が生じます。
また、人と犬が見つめあうことによって双方のオキシトシン分泌が促進されることが分かっています。
イヌの飼い主にむけた視線はアタッチメント行動として機能し、飼い主のオキシトシン分泌を促進するとともに、それによって促進した相互のやりとりはイヌのオキシトシン分泌も促進することが示された。
ペットと見つめあいながら(話しかけながら)触れてあげるということが大切ですね。
手当ての効果の実例
例えば手術などで怖い状況のとき、不安で押しつぶされそうなとき、誰かがそっと肩を撫でてくれると落ち着きますよね。
動物も同じで、頭をなでてあげるとしっぽを振ったり、耳を下げたり明らかにリラックスしているのが分かります。
また入院中の子が、飼い主様が面会に来て話しかけたり触ってあげるだけで、元気になったりご飯を食べるようになるというのはよくあります。
そういった意味でも、自分の病院では入院ではなく、積極的に通院生活(夜は家に帰る)を実施しています。
具体的な手当てのやり方
ゆっくりとした速度で、弱い圧で5~10分程度触れるのが重要です。
英国の神経心理学者らによって行われた研究では、1秒に5cm前後の速度でなでたときに最も気持ちよく感じるという結果が出ています。
参考:Psychophysical assessment of the affective components of non-painful touch
ペットが体調不良の時や発作が止まらないときなどは、抱っこしてあげたり、背中をゆっくりさすってあげましょう。
【まとめ】手当の効果を利用しよう
ペットの突然の不調に対して、家でできることは「手当て」です。
手当ては飼い主様にしかできない治療ですので、優しく触ってあげて、たくさん話しかけてあげましょう。