「猫の肥大型心筋症ってなに?」
「肥大型心筋症って診断されたけど、どういった予後なの?」
「寿命ってどれくらい?長生きするの?」
など愛猫が肥大型心筋症と診断されたら、疑問や不安がたくさんありますよね。
この記事では、猫の肥大型心筋症について、
- どんな病気なの?
- 症状や治療法は?
- 治るの?予後は?
などをお伝えするとともに、自宅でのケアの方法もお伝えいたします。
目次
猫の肥大型心筋症は心臓の遺伝病
肥大型心筋症は、心臓の筋肉が肥大してしまう猫ではよくある病気の一つです。
発症には遺伝的な背景も考えらえ、好発品種には、
- メインクーン
- ラグドール
- アメリカンショートヘア
- ブリティッシュショートヘアー
- ノルウェージャンフォレストキャット
などがありますが、雑種でも認められます。
診断時の年齢は6か月齢から20歳齢と幅広く、発症はオス猫に多い傾向があります。
心臓(左心室)の筋肉が肥大すると何が問題なのかというと、
- 心臓のポンプとしての機能が落ちる
- 血流の異常
が生じてしまうことです。
その結果、肺水腫(肺に水が貯まる)や胸水(胸腔;胸の中に水が貯まる)といったことを引き起こし、呼吸がうまくできなくなってしまいます。
猫の肥大型心筋症の症状~後ろ足に症状が出ることも
猫の肥大型心筋症は、多くの猫で無症状であることが多いです。
また、
- なんとなく元気がない
- 食欲が若干落ちた
- 寝ている時間が増えた
などのよくある症状で来院し、検査をして発見されることもあります。
「無症状だったり、ちょっとした症状しか出ないなら、そんなに怖い病気じゃないの?」という感じもしますが、答えは「NO」です。
肥大型心筋症では、急激に症状を示す場合もあり、
- 開口呼吸(口をあけて呼吸する)
- 呼吸困難
- チアノーゼ(舌が紫色になる)
- 咳
- 呼吸数の増加
- 失神
といった状態となり、場合によっては亡くなってしまう事もあります。
また、肥大型心筋症により血液の流れが滞ると、「動脈血栓塞栓症(ATE)」という血栓が後ろ足の動脈に詰まってしまう病気になってしまう事も多いです。
この場合、突然の後肢麻痺や冷感、呼吸困難などが前ぶれもなくあらわれることがあります。
エコー検査での心筋肥大と除外診断により診断
猫の肥大型心筋症の診断は、
- エコー検査(心臓超音波検査)
- 除外診断
によって診断をします。
人の場合は、心臓カテーテル検査や心筋生検(心臓の細胞を採取する方法)によって、より正解に診断を行います。
ただし動物医療の場合は、心臓カテーテル検査や心筋生検は一般的ではないため、エコー検査やレントゲン検査などを行い、他の疾患を除外して診断を行います。
そのため現在の診断法としては、単純に心筋の厚みを測るだけでなく、様々な心臓の評価(収縮能力や左心房の大きさなど)を用いて診断していきます。
的確な診断をするためには、
- 性能の良い超音波装置
- 獣医師の腕の良さ
が必要となってきます。
ただ猫によっては、検査中に暴れてしまったりくねくね動いてしまうと言うことがよくあります。
特に心疾患を持った猫を検査する場合には、一気に急変する可能性もあるので、検査を中断せざるをえない場合もあります。
治療法や薬、サプリメントは?
残念ながら、肥大型心筋症自体を治す治療はありません。
症状の進行を遅らせるために、発見時に無症状であったとしても、定期的な検診と必要に応じた治療が必須となります。
また、症状がなくても心臓の評価がよくない場合には、
- βブロッカー(心拍や収縮力を抑えて心臓を休ませる薬)
- 抗血栓薬(血栓をできにくくする薬)
- ACE阻害薬(血圧を抑える薬)
などを投与して経過をみます。
猫の肥大型心筋症はどういった症状を示すのかが多岐に渡るため、その状況に応じた治療が必要となってきます。
心臓に良いとされるサプリメントも市場には多く見られますが、あくまでサプリメントにとどまり、医学的な根拠はありません。
肥大型心筋症の寿命って?長生きする?
肥大型心筋症の症例により寿命は様々です。
- 少しの投薬治療で寿命を全うする子
- 突然死をする子
- 急速に進行してしまい短命な子
などいろいろな状況があります。
また、一度心不全や動脈血栓塞栓症となってしまった猫の場合は、短命であることが多いです。
猫の肥大型心筋症の治療費は高額
費用に関しては、動物病院や病態によって全く異なります。
緊急疾患として運ばれてきた場合は、きわめて高額になることが予想されます。
また、心臓病の薬は薬価が高く、一生飲み続ける必要があるので、治療費も高額になることが多いです。
猫の肥大型心筋症の予防法~【自宅でのケア】
肥大型心筋症自体を予防する方法はないですが、定期的な健康診断で、早期発見・早期治療をすることは可能です。
また、遺伝も関与する進行する病気なので、食事によって治る・よくなると言ったことはありません。
ただ、適切な体重を維持することで心臓の負荷を減らすことは可能です。
そういった意味でも食事療法は大事で、自宅でのケア法として重要です。
今一度、愛猫の体重管理に気をつけるようにしましょう。
【まとめ】猫の肥大型心筋症
猫の肥大型心筋症は、遺伝が関わっていると言われており、心臓のポンプとしての機能が落ちてしまう病気です。
無症状であることも多いですが、進行する病気なので、ある日突然症状が出るといったこともあります。
突然の呼吸困難や後肢麻痺が見られることが多く、懸命な処置を行っても助からない場合もあります。
肥大型心筋症は、定期的な健康診断と投薬治療で、症状の進行を遅らせることが可能です。
愛猫の健康維持のために、病気の早期発見・早期治療を心がけましょう!