「最近犬の眼が白くなってきたような…」
人でもよく聞く眼の病気「白内障」は、犬でもよくなる病気の一つです。
犬の白内障は、本来透明である水晶体が種々の原因によって、濁ってしまう病気です。
進行すれば視力が低下し、失明してしまいます。
この記事では、
- どうして犬は白内障になるの?
- 白内障の治療は?
- 白内障の予防法とおすすめサプリメント
など「犬の白内障」について、飼い主様が不安に感じていることを、
全て解決いたします!!
目次
犬の白内障の原因とは?
犬の白内障の原因は、
- 先天性
- 遺伝性
- 加齢性
- 代謝性
- 外傷性
- 薬物性
- 他の眼疾患に続発
などの原因で生じます。
先天性白内障
先天性白内障は、生後2週間ほどで眼が開いたときに、すでに白内障が認められたものをいいます。
発生過程での異常や感染などが原因と言われています。
代用乳飼育で、アルギニン不足になることによって生じるときもあります。
遺伝性白内障
- トイプードル
- キャバリア
- パピオン
- 柴犬
- ジャックラッセルテリア
- アメリカン・コッカー・スパニエル
などの犬種で、遺伝性の白内障があると言われています。
これらの犬種は、比較的若い年齢で白内障になることがあります。
加齢性白内障
一般的に、6歳以上(小型犬では10歳以上)の犬で生じる白内障を指します。
加齢以外に白内障の原因が見つからない場合が「加齢性白内障」です。
進行は比較的緩やかなことが多いです。
代謝性白内障
糖尿病やクッシング症候群などによって、白内障になることがあります。
なぜ糖尿病で白内障になるのか、理由は分かってないのですが、持続的な高血糖により、
- 眼房水内の浸透圧上昇が生じる
- 過剰な糖とたんぱく質が結びつき、その代謝産物が貯まった
ことによるのでは?と言われています。
外傷性白内障
木の枝にぶつかったり、他の犬と噛みあったり、猫に引っかかれたりして白内障になることもあります。
また、アトピー性皮膚炎などで、慢性的に眼のまわりを掻いていたり、こすっているとなる場合もあります。
薬物性白内障
ケトコナゾールという抗真菌薬の長期投与により、白内障になるリスクがあると言われています。
他の眼疾患に続発
他の眼の病気を患っていて、その後白内障になってしまうこともあります。
- ブドウ膜炎
- 水晶体脱臼
- 緑内障
- 進行性網膜萎縮
などの病気に続発して起こることがあります。
【白内障に見た目が似ている病気「核硬化症」】
「眼が白くなった」ということで来院されるほとんどがこれです。
水晶体の中央部の核という部分が、圧迫によって硬くなった状態です。
犬では7~8歳、猫では12歳以上でよく見られます。
白内障と違い、軽度の視力障害になることがある程度で治療の必要はありません。
病期による犬の白内障の分類
病期によって、
- 初発白内障
- 未熟白内障
- 成熟白内障
- 過熟白内障
と分類します。
初発白内障
初発白内障では、視力障害はないので、飼い主様は気づかないです。
眼の定期検診などで、検査を行ってはじめて気が付きます。
水晶体全域の10~15%程度が混濁している状態です。
未熟白内障
びまん性(水晶体全域の15%以上)に混濁している状態の白内障です。
水晶体の混濁は明らかとなり、混濁部位によっては視覚障害が出るときがあります。
水晶体の混濁が全体に広がってないうちは、日常生活で視力の異常を感じることはほとんどないです。
成熟白内障
水晶体全域に混濁がみられる状態の白内障です。
この状態では失明しているので、モノにぶつかるようになります。
過熟白内障
水晶体成分が溶けてしまった状態です。
過熟白内障になると、ブドウ膜炎を併発することが多く、眼をしょぼしょぼしたり、結膜が真っ赤に充血していることがあります。
水晶体中のたんぱく質は、水晶体の外に出てしまうと強い抗原性(異物として認識される)を示すため、重度のブドウ膜炎になると言われている。
犬の白内障の治療法
- 初発白内障、未熟白内障では手術をする必要はありません。内科療法(目薬や飲み薬)で経過を見ていきましょう。
- 成熟白内障、過熟白内障は手術適応です。
内科療法 目薬や飲み薬
目薬や飲み薬では、白内障の進行を防いだり、改善することはできません。
これらの目的は、白内障によって生じる合併症の予防のためです。
【白内障で生じる合併症】
- 水晶体起因性ブドウ膜炎(ブドウ膜の炎症で強い痛みを伴う。)
- 水晶体脱臼(水晶体が本来の位置から外れてしまった状態。)
- 網膜剥離(像を投影する網膜が剥がれてくる病気で、ひどいと失明する。)
- 続発性緑内障(白内障の炎症で眼圧が上がり、痛みや視力障害が起きる。)
などがあります。
この中でも、水晶体起因性ブドウ膜炎を合併することが多いので、非ステロイド系点眼液や、ステロイド系点眼液、場合によっては内服薬を使用し経過を見ていきます。
糖尿病で生じた白内障は、初期の場合なら、糖尿病を治療することによって白濁が回復することもあります。
加齢で生じた白内障には、ピレノキシン点眼液が犬に認可されています。
【ピレノキシン点眼液(カタリン®点眼液、カリーユニ®点眼液など)】
水晶体にキノイド(代謝の過程で生じた変な物質)がくっついて、水晶体が濁ると言われています。
ピレノキシンは、水晶体にキノイドがくっつくのを抑制する薬です。
未熟白内障までは予防効果があり、進行を抑える目的で使用します。
ただし、白濁が取れるわけではないです!
外科手術
犬の白内障の治療は、外科手術です。
白濁した水晶体を摘出して(吸い取って)、代わりに人工眼内レンズを挿入します。
加齢性の白内障で積極的に手術を希望される飼い主様は少ないですが、若齢で発症した子は手術をしたほうがいいです。
外科手術によって、
- 高い確率で視力回復ができる
- 合併症の発生率の低下
が望まれます。
また、犬の白内障では術後管理が重要なことから、
- 毎日点眼や内服ができるかどうか
- 気性が荒かったり、触らせない性格ではないか
- 長期間(1か月以上)エリザベスカラーをつけられるか
は重要なポイントです。
詳しくは眼科専門動物病院に確認してみましょう。
犬の白内障の手術はいつ頃すべき?
成熟白内障以降は手術の適応です。
白内障の手術を考えている場合は、病期が進行するほど合併症が生じて手術不可となってしまうので、注意が必要です。
犬が白内障になったらどうしよう
犬は嗅覚や聴覚が優れており、そもそも「視力」に頼る部分が少ないです。
なので両眼とも失明していても、意外とぶつからなかったりするんです。
もし、愛犬が白内障になってしまったら、
- なるべく家具の位置を変えないように
- 階段から落ちないように柵をつける
- 散歩はリードを使って誘導してあげる
などして対応してあげるといいでしょう。
白内障を予防するために~おすすめサプリメント~
一部の白内障では、生活習慣を整えたり、基礎疾患の治療をしっかり行うことで予防ができます。
また、
- サプリメントを服用・点眼する
- 紫外線を避ける(紫外線の強い時間の散歩を控える)
ことは白内障の予防につながります。
抗酸化作用のある「アスタキサンチン」や「アセチルカルノシン」、「ビタミンE」などは点眼や服用して、白内障の進行を予防する可能性があります。
また、アセチルカルノシンという成分の入った目薬(クララスティル、Dsmileなど)も予防的に使われることもあります。
ネット上でも多く見かけますが、目薬タイプの点眼薬は、主治医の先生と相談して使用するといいでしょう。
これらサプリメントは、進行予防に関与する可能性がありますが、必ずしも効果があるわけではないです。
犬が白内障かもと思ったら
「何となく愛犬の眼が白いような…」
「最近ぶつかるようになってきたなぁ」
「ボールを追っかけなくなっちゃった」
と感じる時は、はやめに動物病院を受診しましょう。
白内障は手術でしか治りません。
ただ、目薬や飲み薬で合併症を予防したり、進行を遅らせたりすることはできます。
早期発見、早期治療を!