「うちの猫は、少し離れるだけで鳴きます…」
「留守にすると、トイレを違う場所でしてしまいます…」
「ベタベタと甘えん坊で、一緒にいないとダメなんです」
などの症状は『分離不安』と言い、飼い主様と離れてしまい不安になることで生じます。
この記事では、
- 猫の分離不安とは何?
- どういった症状なの?
- うまく治す方法を知りたい!
などを解説し、愛猫が安心して生活(お留守番)をできるようになる方法をお伝えいたします。
目次
猫の分離不安とは、飼い主様と離れることでの強いストレス反応
猫の分離不安とは、猫が飼い主様など愛着を持っている人と離れてしまうときに生じる、苦痛を伴ったストレス反応のことです。
オス猫の方がメス猫よりも分離不安になる傾向があります(去勢オス68%、避妊メス29%)。
分離不安の多くが5歳ごろまでに症状を示し、高齢猫においては不安傾向が強くなるとも言われています。
分離不安の原因はたくさんある
猫の分離不安の原因として、
- 早期に親猫や兄弟猫と離れた
- 生育環境(完全室内飼い、単頭飼育)
- 恐怖体験(お留守番中に雷や地震などの恐怖があった)
- 生活環境の変化(コロナ禍での飼い主様の生活リズムの変化)
- 加齢
- 脳や神経の病気
などがあります。
猫の分離不安は犬に比べると少ないですが、分かっていない部分も多いと思われます。
過剰に鳴いたり、毛をむしったりと様々な症状がある
猫の分離不安の主な症状は、飼い主さんと離れたときに、
- ベッドやカーペットなど不適切な場所での排せつ
- 過剰に鳴く
- 物を壊す(クッション、机などをぼろぼろにする)
- 過剰になめる、過剰な毛づくろい(自傷行為)
- 食欲不振
- 足や尾を噛む(自傷行為)
- ウールサッキング(織物吸い)
など様々な症状が認められます。
また、お留守中だけでなく、留守になりそうな瞬間を予測してなることもあります。
分離不安は、他疾患との鑑別も重要です。
例えば、不適切な排せつや皮膚をなめる行動は、膀胱炎や皮膚炎など病気の可能性もあります。
これらの症状が留守中だけに起こるのかどうかをしっかり見極めることが大切です。
【猫の分離不安の治療法】効果的な3つの治し方
猫の分離不安の治し方は大きく分けて、
- トレーニング(行動修正法)
- 薬を使う
- 音楽やTVなどでリラックス
の3つがあります。
一つずつ説明していきますね。
①トレーニング(行動修正法)
分離不安を治すためにはトレーニングが必須です。
猫と生活していくうえで、留守番をしてもらうときは多いと思います。
留守番を特別なイベントとして認識してしまうと、猫も不安になってしまいます。
「留守番をすることは普通なんだよ」というようにしつけてあげましょう。
猫が常に飼い主様と一緒にいなくても大丈夫!というように、自立させるつき合い方に改善していきます。
具体的には以下の方法で行います。
在宅中でも無視する瞬間を作る、甘やかさない
分離不安の猫は、過度に甘やかされていたり過保護な状態であることが多いです。
飼い主様が在宅中のときでも一人の時間を作り、それぞれ別行動する時間を持ちましょう。
出かけると気づかせないようにする
猫に出かけることを悟られないようにしましょう。
例えば出かける前には、
- 洋服を着替える
- カバンやカギを持つ
- バタバタ慌ただしい
などの行動パターンがあると思います。
ただ、それを猫が覚えてしまうと、「○○が起きると飼い主様が出かけてしまう!」と認識してしまいます。
そのため、洋服を着替えても家に居たり、着替えず外出したりして、猫にルーチンを根付かせないようにすることも重要です。
帰ってきてもしばらく無視する
分離不安の猫は、飼い主様が帰ってくると過剰に愛情表現する場合が多いです。
なので、帰ってきてもしれっと接するようにしてみましょう。
しばしの我慢、5分もすれば落ち着きます。
粗相をしていても絶対に叱らない
留守中の粗相についても、無視してしれっと片づけるようにしましょう。
猫は粗相をしてから時間が経ったのちに怒られても、なぜ怒られているのか分かりません。
そのため、帰ってきてから便や尿が違うところにしてあっても、怒らず無視して片づけるようにしましょう。
短時間の留守番を繰り返して慣らす
短い時間の留守番を繰り返してみるのもおすすめで、効果的な方法です。
5分、10分、1時間…と慣らしていくようにしましょう。
ペットカメラで愛猫の様子をみると、外出先でも安心ができるでしょう。(ワンちゃんの記事ですが、ネコちゃんでも同様です)。▼
安全で安心できる場所の提供
猫が安心して過ごせる、快適な環境を提供してあげることも大切です。
- 大きくてアクセスがよく、きれいなトイレ
- 清潔な水
- おいしい食事
- 安心して眠れる場所
- 存分に爪とぎができる場所
- おもちゃや遊び場
といったことです。
知育玩具や遊びで刺激を与える
留守番をするタイミングで知育玩具(コングなど)やおやつをあげている場合、「おやつをもらえる=留守番」と覚えてしまうことがあります。
そのため普段から同様の知育玩具やおやつをあげるようにして、そういったことを根付かせないようにしましょう。
また、猫は狩りを模した遊びが大好きです。
運動になるだけでなく、猫本来の狩猟本能を掻き立てられ、精神的に安心します。
②薬を使う
トレーニングと同時に、薬を用いて治療することもあります。
具体的には、
- 三環系抗うつ薬(TCA)
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
- ベンゾジアゼピン系薬
などの精神を穏やかにする薬を使用します。
また薬の副作用として、
- 嗜眠(意識混濁)
- 嘔吐や下痢
- 食欲低下
などがみられることもあり、容量を減らしたり種類の変更が必要な場合もあります。
③音楽、TVなどでリラックス
音楽やTV、ラジオなどをつけたままで出かけることで、抗不安効果やリラックスをできる場合があります。
ただ、そういった音や映像に興味がない猫の場合は効果がないので注意していください。
症状の改善には時間がかかる
不安の程度や発症してからの期間などにもよりますが、トレーニングや薬物療法ですぐなおる!というわけではありません。
症状の改善には数週間~数か月程度かかることが多くあります。
そのため、根気強くトレーニングをしていく必要があります。
【まとめ】猫の分離不安症とは?症状や治療法・対策などを獣医師が解説!
猫の分離不安は、大好きな飼い主様と離れてしまうことで生じます。
ベタベタくっついて来てくれると、かわいいな!と感じてしまうかもしれませんが、過度な依存は分離不安を引き起こしてしまいます。
留守番中に、過度に鳴いたり、粗相したり、物を破壊したり…と不安による行動が多く、上手に治していくためにはトレーニングが非常に重要です。
ただ、すぐに治るわけではなく、数か月程度かかる場合もあり、根気強く行っていく必要があります。
治すのに夢中になるあまりに、愛猫にそっけなくなりすぎるのには注意しましょう。
【参考資料】
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,猫の治療ガイド2020.,EDUWARD Press,p826-p829