内分泌疾患は、体の健康維持に関与しているホルモンに異常をきたし、引き起こされる病気です。ホルモンの病気は、中高齢になってから発症する病気が多く、健康診断で見つかることもあります。

また、比較的ゆっくり進行する病気が多く、毎日一緒に過ごしていると病気だと気づかないことも多いです。何のホルモンが増減しているかで、出る症状は全く異なります。気になることがありましたら、いつでもご相談ください。

こんな症状はありませんか?
  • 水を飲む量が増えた
  • おしっこの量が増えた
  • 毛が抜けるようになった
  • 皮膚トラブルが治らない
  • 嘔吐や下痢が増えた
  • 食欲や元気がなくなった
  • やせてきた
  • 食べないのに太ってきた
  • 性格が変わった
  • よく鳴くようになった(猫)
どんな検査をするの?
問診・触診

内分泌疾患がある場合には、特徴的な臨床症状や外見をしていることが多いです。飲水量や活力などの問診、顔や体つきなどを詳細に観察することが重要です。

血液検査

内分泌疾患がある場合は、血液検査にて特徴的な異常値が出ることが多いです(ALPの高値、高脂血症など)。また、2つ以上の病気が重なって生じていることも多く、全身状態を評価するうえでも大切な検査です。

尿検査

内分泌疾患では、多飲多尿がみられる事が多く、尿検査での情報は大切です。尿比重や感染の有無、尿糖やケトン体などの異常を検出します。

各種ホルモン検査

疾患によっては確定診断のために、ホルモン検査や刺激試験などを行います。

例)

  • 糖尿病→糖化アルブミン測定
  • クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、アジソン病(副腎皮質機能低下症)→ACTH刺激試験
  • 甲状腺疾患→甲状腺ホルモン測定
画像検査(レントゲン検査・超音波検査など)

レントゲン検査や超音波検査により、内分泌疾患の原因や他の疾患の有無を精査します。副腎や甲状腺が腫瘍化していることもあり、大きさや血行動態などを確認します。

CT・MRI検査

診断を確実にするために、また手術に際しての詳細な情報を得るためにCTやMRT検査をすることもあります。

どんな病気があるの?

内分泌疾患については、こちらも参考にしてください

甲状腺機能亢進症

中高齢の猫で多く発症する病気です。

  • よく食べるのに痩せている
  • 水をよく飲む
  • よく鳴く
  • 被毛粗剛

などの特徴があります。ホルモン検査で容易に診断ができ、投薬にて症状が改善することが多いです。ただし、中高齢の猫は腎不全を併発していることが多いので、慎重に経過を見ていきます。

また、甲状腺の腫大がみられる場合は、手術で腫大化した甲状腺を摘出することもあります。毎日の投薬が難しい場合は、フードを変えることで治療することも可能です。

甲状腺機能低下症

中高齢の犬で多く発症する病気です。甲状腺ホルモンの量が低下することにより、様々な症状が出ます。

  • 最近元気がなくなった
  • 食欲が低下しているのに太っている
  • 皮膚病が治らない
  • 鼻の頭やしっぽの毛が薄い

などの特徴があります。この病気は、ホルモン検査で容易に診断ができ、治療を開始するとみるみる症状が良くなることが多いです。毎日薬を飲むことで、寿命まで良好な生活を送ることができます。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

中高齢の犬でよく発症します。副腎という、腎臓の上にある臓器から「コルチゾール」というホルモンが多量に出て、様々な症状を引き起こす病気です。「ステロイド」という言葉は聞いたことがあるかもしれませんが、コルチゾールはステロイドの一つです。

  • よく水を飲むようになった
  • よくおしっこをする
  • 脱毛や皮膚病が治らない
  • よく寝るようになった
  • 太っている
  • よく食べる

など症状は多岐に渡りますが、多くが「よく水を飲む」「よくおしっこをする」という症状で来院されます。ACTH刺激試験という特殊な検査(血液検査)ですぐに診断ができます。当院では、アドレスタンという比較的副作用が少ない薬を慎重に使い、定期的な検査を行うことにより、良好に過ごしている子が多くいます。

また副腎の腫瘍でクッシング症候群になることもあり、その場合は外科手術で腫瘍化した副腎を摘出します。コントロールがうまくいかない場合は、併発疾患(特に糖尿病)がある場合が多く、その治療を同時に行います。

副腎皮質機能低下症(アジソン病)

この病気は他のホルモンの病気と違い、比較的若い子でも発症する病気です。主に犬で発症します。

  • 数日何となく元気がない
  • 食欲がない
  • 下痢や嘔吐をする
  • 震えている

など非特異的な症状が多いですが、突然死する可能性もあるので、適切な診断と治療が必要です。当院ではフロリネフという薬を用い、不足したステロイドホルモンを補います。コントロールが難しい場合には、プレドニゾロンを併用し治療していきます。

糖尿病

人でも良く聞く病名ですが、犬や猫でもなる病気です。ただし人と違い、治療にはインスリン注射が必要なことが非常に多いです。

  • よく水を飲む
  • おしっこの回数が増えた
  • よく食べるけど痩せている
  • 肥満
  • 被毛粗剛

などの症状がありましたら、糖尿病の可能性があります。糖尿病も「よく水を飲む」「おしっこの回数が増えた」という症状で来院されることが多いです。血液検査や尿検査ですぐに診断ができます。

当院では、数日の入院で血糖値の動きをみながらインスリンの種類や量を決定し、自宅でのインスリン注射を行ってもらっています。インスリンの注射は、慣れれば比較的簡単に自宅で行える治療です。ただ、動物が動いたりしてインスリン注射が難しい方もいらっしゃいますので、注射回数を減らしたり、毎日注射に通院されたりなど、飼い主様に合わせて治療を行います。

インスリンの種類はたくさんあり、コントロールがうまくできない場合には量や種類を適宜変え、症状が良くなるよう治療いたします。
また糖尿病は、併発疾患がある場合が多くあり、そこの見極めと治療のさじ加減が非常に大切です。糖尿病は食事療法を含め、しっかり治療をしていけば、寿命まで全うできる病気です。

当院では、他にも様々な内分泌疾患を扱っております。国内で入手困難な薬も外国から輸入していますので、様々な種類の薬をご提案できます。定期的な検査と適切なホルモン補充で寿命まで過ごすことができますので、気になる症状があったり、何か不安なことがある方は是非ご相談ください。